【TOJ2023】ツアー・オブ・ジャパン2023全ステージまとめ/チームの挑戦と兒島の成長

【TOJ2023】ツアー・オブ・ジャパン2023全ステージまとめ/チームの挑戦と兒島の成長

5月21日〜28日までチームブリヂストン サイクリングが参戦した、日本最大級のロードステージレース『ツアー・オブ・ジャパン』。
8日間にわたったこの戦いを、一つの流れで振り返ります。


窪木、今村、兒島、河野

【ツアー・オブ・ジャパン2023】
開催日程: 2023年5月21日(日)〜5月28日(日)
出場選手: 窪木一茂、橋本英也、今村駿介、河野翔輝、松田祥位、兒島直樹
詳細:https://www.toj.co.jp/

日本最大級のロードステージレース『ツアー・オブ・ジャパン』(以下TOJ)。国内で最もUCIクラスの高いステージレースで、チームブリヂストンが参戦するロードレースでも特に重視する大会です。

2020年より4年間、TOJは感染症対策のために中止や半分の日程で行われてきましたが、2023年は、4年ぶりにフルスペック8日間8ステージでの開催でした。

8日間の日本最高峰のレース参戦を通し、宮崎監督が感じたテーマは大きく2つ。
『チームの挑戦』、そして『兒島直樹の成長』でした。
今にしてみれば、これらテーマはチーム編成の時から大きく関わっていました。


河野、橋本、窪木、兒島、今村、松田

*TOJ参加にあたってのチーム編成

UCIアジアツアー2.1クラス、アジアで行われるステージレース中での最高ランクであるTOJ。
8回あるレースの中でのステージ勝利を掴むため、チームとしても最高と思われるメンバーで臨みました。
それが窪木一茂、橋本英也、今村駿介、河野翔輝、松田祥位、そして兒島の6名。日本代表のトラック強化指定を受ける選手たちでの構成です。

今年のTOJ参戦にあたり、チームの目標を宮崎監督は、次の3つに設定しました。

1)国内最高峰レースでのステージ優勝を、オリンピック出場を目標にするメンバー総力を尽くして狙う。

2)ステージレースで毎日全力を尽くすことを通し、6月中旬に控えるオリンピック出場国枠ポイントを獲得できるトラックアジア選手権に勝利できる持久力とレース経験を積み上げる。

そしてもうひとつ、ステージ優勝以外の目標を求めた時に、6人の中でも最若手である22歳の兒島が『僕は山岳賞に挑戦したいです』とみずから手を挙げました。そこで決まったのがこれです。

3)兒島が山岳賞に挑戦する。それをチームで応援する。


橋本

*第1ステージ 堺

個人TTで橋本が8位、最高峰ロードレースでの表彰台はやはり遠い

 >>レポート  https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-sakai.html


大会の幕開けは2.6kmのコースを選手一人ひとりで走る個人タイムトライアル。1/100秒の差が大きく順位を分ける、ミスの許されないレースです。

チームに高性能なコンポーネントを提供いただくシマノのお膝元である、大阪府堺市の大仙公園を周回する5つのコーナーのコースは、ロードレースならではのコーナリング技術が勝敗を分ける印象です。

結果、チームの最高順位は橋本英也の8位。東京2020トラック競技オムニアムの日本代表で、高強度スタミナとコーナリング技術に定評のある橋本の、決して悪くはない結果です。
しかし国内最高峰ロードレースのレベルには一歩及べず、表彰台を遠くに見ることになりました。


兒島

*第2ステージ 京都

兒島が有言実行、山岳賞ジャージを迷うことなく獲得

 >>レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-kyoto.html


ここは山岳賞ポイントが獲得できるステージ。山岳賞は『キング・オブ・マウンテン』(KOM)というコース最高地点を、先頭で抜けた3位までの選手が獲得できるポイント合計で決まります。

流れを決める最初の逃げを嫌う集団からチャンスを見て、登りでタイミングよく抜け出した兒島は5名の逃げグループを形成。
山岳ポイントを前に他選手が牽制して速度を落とす中、山岳賞に挑戦すると決めた兒島は、強みのスプリント力を活かし山岳1位ポイントを獲得します。

兒島を含む5名は最終周回まで逃げ、兒島は迷いなく2回の山岳ポイントを全て1位通過。最後に集団に捕まったものの目的の山岳賞ジャージを獲得。これを最終ステージまで守り通したい。

昨日にチーム最上位だった橋本はレース序盤でパンク、大きく後退し開いたタイム差を、登りの多いこのコースで挽回できず残念ながらリタイア。チーム総数はこれで5名に。


今村

*第3ステージ いなべ

目的に向かって動き切れたチーム、今村は復調の兆しを見せる

 >>レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-inabe.html


レース序盤から、他チームの2選手が逃げを決めます。チームブリヂストンの5名は集団の牽引力となって、逃げを追いながらも兒島を守って前に引き上げます。

特に山岳ポイントへの登りでは松田が兒島をアシスト。松田が山岳ギリギリまで先頭で兒島をしっかり引き、そのため兒島は2回の山岳ポイントスプリントで共に先着、3位ポイントを2度追加できました。

レース自体はその序盤から逃げた2選手がそのまま逃げ切っての勝利。最終局面で今村がフィニッシュスプリントに挑みましたが、上位は獲得できずに終わりました。ただ兒島は山岳賞ジャージをキープします。

チームが兒島にいいタイミングで先頭を取らせたこと、そして兒島がそれに確かに応えたことが、このレースでの大きな手応えとなりました。

さらに先のトラック全日本選手権では明らかに不調だった今村が、ここで復調してきたのが、チームへのいい知らせとなりました。


窪木

*第4ステージ 美濃

美しいチームワークと作戦通りの勝利の型でも悔しい2位に

 >>レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-mino.html


チームブリヂストンのチームワークが映えたステージでした。序盤は山岳ポイントを狙った兒島が逃げグループに、窪木の采配でスムーズに乗ります。

5名の逃げは大きなタイム差をつけてレース全般をリードし、かつ兒島は山岳賞での接戦スプリントで1位ポイントを2度獲得。
目的を達成した兒島は終盤に向けゆっくりと集団に戻り、ここからステージ勝利に向かうチーム力が冴えました。

2年前より56Tというシマノ特別仕様の重いギアをつけている河野が一気に加速、他を振り切る速度まで加速し先頭で最終コーナーを通過。
後ろに控えた松田が、個人パシュートアジア記録保持者ならではの、4分強を全開で踏み切れるスタミナで、今村と窪木を引き切ります。

他チームを寄せ付けないほどの速度で引く今村から、いよいよエーススプリンター窪木を発射。
このパターンでいくつも勝利をものにしてきたチームでしたが、今大会の有力選手と目された海外チーム選手にフィニッシュを前に抜かれ辛くも2位に。

完全に作戦通りに勝利の型を作ったチームブリヂストンでしたが、あと10cm勝利に及びませんでした。しかしこれが、自転車ロードレースです。


河野

*第5ステージ 信州長野

厳しい山岳ステージでも今村のアシストで兒島は山岳賞キープ

 >>レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-mino.html


上りの厳しい山岳ステージの信州長野。筋肉量の多いチームブリヂストン選手には厳しい1日となりました。それに加え、朝から体調不良を訴えていた松田が序盤に脱落、レースを降りることに。

1名を減らし残り4名のチームですが、兒島に山岳賞ポイントを追加したいところ。全3回の山岳賞ポイント、中盤に決まった逃げに兒島が、そしてアシストとして今村が入って山岳賞に挑戦します。

まず1度目の兒島は3位で通過。2度目は兒島が先頭で山岳賞に向かうも、山岳賞2位の選手に不意を突かれて2位に。3度目は逃げがペースアップし、チーム両選手は遅れてしまいました。

とはいえ兒島は山岳賞をキープ、今村の調子は確実に上がっています。窪木と河野は着実に完走して次のステージへとコマを進めました。


窪木、兒島、今村、河野

*第6ステージ 富士山

ヒルクライムステージは我慢のステージ、兒島がチーム最上位

 >> レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-fujisan.html


ここは上りだけのヒルクライムステージ。ふじあざみラインの11km・標高差1160mを登ります。チームブリヂストン選手にとってはまさに我慢の一手。タイムオーバーにならないよう、自分との戦いに終始します。

我慢とはいえ、ここは山岳賞ポイントの最も高いステージ。兒島は3ポイント差まで迫られるも辛くも次のステージまでジャージをキープ。そしてチームの最高順位は兒島、この気持ちも大きく評価したいところです。

「なんだか周りが僕のことをジロジロ見るんですよね」と兒島。そりゃ山岳賞ホルダーなんだから当たり前です。次が最後の山岳ポイント獲得ステージ、明日のポイント采配で、兒島は山岳王になれるのか? が決まります。


今村、奥隅マッサー、兒島、河野

*第7ステージ 相模原

悔しい、悔しい、悔しい。兒島に取らせてあげられなかった

 >> レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-sagamihara.html


とても暑い一日となり、熱いレースになりました。今日の大きな目標は一つ、『兒島の山岳賞ジャージをチーム全員で守ること』。

全ての選手が逃げを決めたい今日、アタックが繰り返されるも逃げは決まらず、レースは速いペースで進みます。その中での3回の山岳ポイントは、チームブリヂストンとライバルチームが総力を尽くす真っ向勝負に。

共にチーム員全員が前に上がります。チームブリヂストンは河野、窪木、今村と全開で脚を使って兒島を守って引き上げるも、最後の急坂でライバル選手に越されて1位ポイントを奪われます。

1回目で1点差に迫られ、2回目で逆転され、絶望的な気持ちの中、絶対に前に出るしかない最後の3回目。厳しい、辛い、悔しい、残念ながら兒島は遅れました。あと一歩だった山岳賞ジャージは、ライバルチーム選手に取られました。

「悔しくて夜、眠れませんでした」次の日の朝に兒島は言いました。「これは失敗じゃない」と今村は諭しました。いつの日か、この悔しさが活きる時が必ず来ます。年上のチームメイトは皆、知っています。まずは、最終日に。


窪木

*第8ステージ 東京

ステージ勝利、終わりよければすべてよし。その証を数字で見よう

 >> レポート https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2023/05/toj-tokyo.html


2023年ツアー・オブ・ジャパン、最終ステージの東京はクリテリウムのような平地ステージ。その戦略は前夜のミーティングで決まり、チームブリヂストンはその通りの走りを行い、窪木がステージ勝利を手にしました。

戦略とはいえ今日までTOJを見てきたものなら、それはあたかも予告ホームラン。
 河野→兒島→今村→窪木。

 1)最終周回でチームブリヂストンは前に出て、
 2)そこから4名でのチームパシュートから、
 3)世界を狙う窪木・今村ペアのマディソンのような、
 4)ただ手を繋ぐハンドスリングがないだけの、窪木の大発射。

この明快なプランを、チームは着実に実行しました。


河野、今村、兒島

それぞれがどういう気持ちで走ったか、情熱の部分はブログにしっかり書かれています。
ここでは選手たちの記録、最高速度の数字から、その勝利を見てみましょう。

・2km先から向かい風の中1km引いた 河野=52.1km/h
・河野から引き継ぎ最終コーナーまで 兒島=61.4km/h
・残り300mから全開で引いた完全復調の 今村=64.8km/h
・解き放たれたチームの要、キャプテンの 窪木=67.6km/h

これまでの悔しさをバネにしたチームブリヂストンは、接戦にならないほどの速度域まで引き上げ、勝利しました。
チームをまとめ上げるのは、やはりチームキャプテン窪木ならではの仕事でした。

これが、自転車トラックレースのスピードです。この速度を活かし、チームブリヂストンは世界と戦い、オリンピックでメダルを取るのです。

動画でもご覧ください。河野がチームを信じて力を出し切ったペダリングから、窪木の圧倒的なフィニッシュスプリントです。


*まとめ

チーム宮崎監督が狙っていたのは、選手たちが自分たちでプランを建て、それを必ず実行してもらうこと。レースという本番で、必ず実践、実行できる経験です。

自分のフィジカルと技量を、最大限に発揮する。8日間のうち7日間は結果につながりませんでしたが、最終日に勝利という結果を出せました。

そして兒島です。兒島はこの8日間の中で、レーサーとして大きく成長しました。彼の光るものを、チーム全員が存分に引き出しました。
チームは兒島を輝かせるという挑戦をし、後一歩で叶いませんでしたが、8日間を通して明らかに団結したチームは、最後にそのチーム力を最高の形で見せられました。

チームで挑戦する。チームで応援する。チームで架け橋となる。それがチームブリヂストンです。

パリ2024オリンピックでのメダル獲得を目指すチームブリヂストン サイクリングは、皆さまより力強い応援をいただき、共に心を震わせ、さまざまな挑戦を続けるチームになります。

これからもチームブリヂストン サイクリングへの応援を、よろしくお願いいたします。

最新記事

Article

前の記事へ 次の記事へ