東京2020オリンピック 超直前ガイド ~トラック中距離種目編~

昨日の短距離種目の紹介に引き続き、本日は、中距離種目であるオムニアムとマディソンの見どころを紹介していきます。
いよいよ自転車競技トラック開始まで、あと3日となりました!

【オムニアム】知力と体力を駆使する唯一の複合種目

修正1.jpg

オムニアムは前回のリオ2016オリンピックから種目構成が変更され、6→4種目へと種目数が減り、すべてゲーム系(複数選手で競われ、相手に勝つために戦略が重要となる)のレースになりました。1日に以下の4種目を実施し、順位を競います。

  1. スクラッチ(男子10km/40周回、女子7.5km/30周回)
  2. テンポレース(男子10km/40周回、女子7.5km/30周回)
  3. エリミネーション
  4. ポイントレース(男子25km/100周回、女子20km/80周回)

オムニアムでは、1~3種目までは順位に応じた得点が与えられ(※各勝者は40点を与えられ、2位は38点、3位は36点と点を与えられる)、その総得点とポイントレースでの点数を合わせて順位を決定します。全体的にどの種目も距離が短く、近年はレースの高速化が進んでいます。そのなかで、戦局を見極める冷戦な判断が求められます。選手によって得意不得意があるので、種目ごとの展開だけでなく、オムニアム全体を通しての流れを考えなければ、頂点にたどり着くことはできません。

時には種目の1位を捨てて、4~5位あたりでうまくまとめるといった選択しなければならないことも。1位を狙いすぎて、下位の順位を取ってしまうと、その時点で表彰台が一気に遠のいてしまうからです。以下、種目ごとの紹介です。

スクラッチ

第1種目は、スクラッチ。一斉にスタートし、ゴール着順がそのまま順位となるシンプルなルールです。そのぶん全体的に速いレース展開が繰り広げられます。とくに残り5周を切るとペースは落ちません。終盤を迎えるまでに、いかに良い位置にいられるかが重要なポイント。
1種目目なので、どの選手も下位にならないように積極的に動いていきます。


テンポレース

第2種目のテンポレースは、5周目以降、毎周1位通過の選手に1点が与えれます。加えて主集団を周回遅れにした場合には、20点を獲得でき、レース終了時のポイント合計で順位を決定します。
4種目のなかでもっとも高速化が進んでいるレースですが、そのなかでも速度が落ちる瞬間があるので、そこでどう集団から抜け出せるかが勝負のカギに。ポイントレースと異なり、1位通過にしかポイントが付与されないため、先頭に出るタイミングを見極め、得点を重ねる必要があります。
周回遅れを狙って飛び出す選手も多く、目まぐるしい展開の変化が見どころです。周回遅れが発生すると、どこが先頭なのか分かりにくいですが、ホームストレッチの審判がどこが先頭かを指さしてくれるので、観戦する際は参考にしてみてください。

エリミネーション

第3種目のエリミネーションは、2周ごとに最後尾の選手が除外されていき、最後の一人になるまでレースが行われます。橋本英也選手曰く「椅子取りゲームのような種目」です。
ビリにさえならなければ、除外されないので、内側の選手に蓋をして、集団から出られないようにするなど、勝ち残るためのいろいろな手が使われます。空間把握能力が求められるレースといえるでしょう。
橋本選手はエリミネーションを得意としている選手です。どういった動きをして、除外から逃れながら上位を目指すのかに、ぜひ注目してください。

ポイントレース

最終種目が、ポイントレース。エリミネーションまでは、順位に応じた得点が与えられますが、ポイントレースだけは、レース中に獲得した点数がそのまま順位として反映されます。言ってしまえば、3種目終了までビリだったとしても、ポイントレースで大量得点できれば、大逆転も起こり得るということです。
指定周回数の着順で1位5点、2位3点、3位2点、4位1点が与えられ、ゴール時には、その倍の点数が獲得できます。
くわえて、テンポレースと同様に主集団を周回遅れにすると20点を獲得できます。3種目終了時点での上位勢は、けん制し合うこともあり、中盤順位の選手が一発逆転をかけてギャンブル的な動きしてくる可能性も大です。
ライバルとなる選手の持ち点を考えながらの駆け引きは見ごたえがあります。観客も表示される経過順位をチェックしながら観戦すると各選手の狙いなども分かり、より楽しめるはずです。

修正3.jpg


【出場スケジュール】

橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
⇒ 8月5日(木)
newEiya-HASHIMOTO.jpg



LIVE配信予定→ https://www.gorin.jp/live/
※8月8日はNHKで中継予定


【マディソン】阿吽の呼吸で戦うバンク上のサーカス

修正2.jpg

マディソンは2選手がペアとなり、交代しながら規定周回を走ります。10周ごとにポイント周回が設けられており、ポイント周回では1位から順位に5点、3点、2点、1点と、4位までに得点が加算されます。レース終了時点で最も多くのポイントを獲得していたペアが優勝です。なお、最終ポイント周回となるゴールでは、ポイントが倍に。また、レース中にメインとなる集団から抜け出し、1周先行して再び集団に追いついた(ラップした)ペアには20点が加算されます。東京2020オリンピックでは、男子50km(200周、うちポイント周回20回)、女子30km(120周、うちポイント周回12回)で競われます。

マディソンでもっとも重要なのは、交代のタイミング。レース展開にもよりますが、ポイント周回に、スプリントを得意とする選手をうまく送り込むのが、スタンダードな戦い方です。ポイント周回になるとスピードは70km/h近くに達し、交代するだけでも脚を消耗してしまうので、その前の周で、ポイントを獲得すべく交代を行うパターンが多いです。

他チームの出方ひとつで、戦況が刻一刻と変化していくので、つねに、次の展開をイメージして、行動することが選手に求められます。

トラックのなかでは、もっとも長距離で競われ、ポイントを獲得できる周回も多いため、すべての周回ポイントでポイント獲得を目指すのは現実的ではありません。「前半に狙っていく」とか「後半に追い上げる」など、あらかじめふたりで戦略を決めておいて、レース中に細かな修正をしながら走ります。

細かな修正といっても、お互いにコミュニケーションを取れるのは交代する一瞬のタイミングだけ。あとは、言葉を発さずとも、互いの走りを見て状態を察し、フォローし合うことが必要になります。まさしく阿吽の呼吸でレースを戦わなければならず、経験値がモノを言う競技のため、世界の強豪には、長くペアを組むベテラン勢も多いです。

マディソンで注目してほしいのが交代のシーン。ルール上は、「手または身体にタッチして交代する」とされていますが、ただのタッチでするのではなく、走行エネルギーに変えるために、ハンドスリング(相手を前に投げ出す動作)が編み出されました。

選手たちは簡単そうに行っていますが、このハンドスリングには高度な技術が求められます。腕だけではなく、体幹を使って投げ出さなければならず、身体を支えるためのハンドルの持つ位置を工夫したり、コーナーのカントを利用したりと、さまざまなテクニックが駆使されます。レースをしている選手と、交代をする選手がバンクの中で入り乱れ、そのなかで器用にハンドスリングが繰り出される風景から"バンク上のサーカス"と形容されます。


LIVE配信予定→ https://www.gorin.jp/live/

TEAM BRIDGESTONE CyclingのFacebookページでは、各レース速報を種目ごとに都度発信予定です。そちらも、ぜひご注目ください。

https://www.facebook.com/Team.Bridgestone.Cycling

photo: S. Kato、Team camera

最新記事

Article

前の記事へ 次の記事へ