ACTIVE LINEに込めた想いとは? 【アンカー中の人 Vol.1 商品企画担当 村河】

アンカーは2020年モデルで、すべての車種をRACING LINE(レーシング ライン)とACTIVE LINE(アクティブ ライン)の2つのカテゴリーに分け、それぞれのデザインもこれまでとは大きく変更しました。 とくにACTIVE LINEは、従来のアンカーとは一線を画したデザインに驚かれた方も多いかもしれません。

ここで改めてACTIVE LINEについて、そして「フェードスタイル」と呼ばれるデザインコンセプトに関して、アンカーの商品企画担当である村河裕紀に聞きました。

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楽しみ方の多様性を

ーー 東京2020オリンピックに向けたTEAM BRIDGESTONE Cyclingの活動もあり、レーシングブランドという印象が強いアンカーですが、2020年モデルではRACING LINEの対となる形で、ACTIVE LINEを立ち上げました。その理由を教えてください。

村河:アンカーはブランド誕生から20年が経ち、つねにその時代時代のトップアスリートとともに歩んできました。もっと遡ると50年近くブリヂストンサイクルは、会社として、レースの現場で戦い続けてきた。そのレーシングブランドとしての「誇り」は、もっとも大切にしている部分であることは今も変わりません。

一方で、スポーツバイクの楽しみ方が多様化するにしたがって、「レースに出て勝つ」ことが目標ではないという方も増えてきています。より多くの方に日本で企画して、作られて、売られているナショナルブランドであるアンカーに親しみを持ってほしいと思ったのがACTIVE LINEを立ち上げた大きな理由です。

綺麗な景色を見に行ったり、おいしいものを食べに行ったり、新しい仲間を作ったり、スポーツサイクルに乗る人が10人いたら10通りの楽しみ方があるはず。それぞれのサイクルライフに寄り添えるように、「ACTIVE LINE」という枠組みで、バイクだけでなく、イベントなどの体験機会も今後は提案していきたいと思っています。

ーー 2020年モデルというタイミングでの発表に意味はあったのでしょうか

村河:東京2020オリンピックが開催されるということは、やはり大きな意味を持っています。ブリヂストンサイクルは、前回の東京1964オリンピックをきっかけに自転車競技部を立ち上げ、シドニー2000オリンピックを契機にアンカーブランドが誕生しました。
また、オリンピック代表選手を輩出するのは、いつの時代もチームにとっての最重要目標のひとつです。ですので、ブリヂストンサイクルのサイクルスポーツ活動にとって、オリンピックはつねに節目となっている気がします。

2020年のオリンピックは自国開催なので、スポーツやフィットネスに対する関心が一気に高まりますし、スポーツサイクルに乗り始める人もきっと増えるはずです。そういうタイミングだからこその発表でした。

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ACTIVE LINEの立ち上げとともに、WEBやカタログのビジュアルデザインも刷新した

ーー ACTIVE LINEのデザインコンセプトを教えてください。

村河:もう一方のRACING LINEに採用している、「レーススタイル」のような、コントラストの強いグラフィックと大きなロゴのデザインというのは、レースシーンやレーサージャージにはよく似合う反面、ロングライドや街中を走る場面などには似合わない。もっと良いデザインがあるのではないか?という思いがデザインコンセプトの根底にあります。

ACTIVE LINEのデザインは「フェードスタイル」と呼んでいますが、そのコンセプトは"調和"と"カラーハーモニー"です。街中から自然の中まで、シーンを飛び越えて駆け抜けるサイクリストの姿や、乗る人のスタイルに合わせた多様な楽しみ方など、スポーツサイクルに関する様々な要素が調和する姿をデザインに落とし込みました。今までにはないスタイリッシュなデザインになったと思っています。

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ACTIVE LINEのフラッグシップモデルであるRL9。写真のオーシャンネイビーは村河も一番気に入っているカラー

ーー 企画当初は他のデザイン案もあったのですか?

村河:デザイン案は様々な方向性で複数案作るところからスタートしました。今回のデザインの原型となるものも初期からありましたが、その他には迷彩っぽいものや、これまでのアンカーの延長線上にあるようなグラフィカルなもの、最近の流行である派手目の色合いとデザインを取り入れた案もありました。

「上質さ」を表現し、新しいサイクリング体験を提供したい

ーーデザインを作り上げるうえで、参考にしたプロダクトはあったのでしょうか?

村河:より多様な楽しみ方を提案したいという思いがあり、フィットネスウエアは参考にすることも多かったです。色だけでなく、素材感であったり質感であったり、人気ブランドのそういった細部に至るこだわりや組み合わせというのは、ACTIVE LINEが目指す方向性としても近しいものを感じました。

ーー フェードスタイルは、5色展開(うち2色は女性モデル)ですが、それぞれのカラーパターンにはどんな意味があるのでしょうか?

村河:カラーコンセプトを決めるにあたって、自分の力で目的地まで行く過程で四季折々の自然を感じられるというのは、自動車にはない自転車ならではの良さであると改めて感じました。また、ランニングよりも移動範囲が広く、内陸から海を目指したり、峠の頂上に挑戦したりすることもできる。つまり自然との親和性がとても高いアクティビティであると思い、今回は自然からインスピレーションを得たカラーリングを揃えました。

名前どおりではありますが、オーシャンネイビーは深い海を、フォレストカーキは木や森を、ストーングレーはごつごつとした岩肌をイメージしています。女性モデルに採用したブルームマゼンダは、道端に咲く花々を、フォギーブルーは靄がかった峠や山道での景色から着想を得ています。
どのカラーパターンも前後で2色に分けていますが、半分はガンメタや黒などを配し、アスファルトに囲まれた都会をイメージしています。都会と郊外をシームレスに行き来する自由さをそのカラーリングで表現しています。

ーー ACTIVE LINEのフラッグシップモデル、RL9ではサテンマットクリアという新しいクリア塗装も採用しました。その特徴を教えてください。

村河:サテンマットクリアは、ツヤ消しの一種ですが、これまで長らく採用していたシャーベットクリアに比べてマットの度合いを変化させています。具体的には、フレームの造形を際立たせるために、マットな質感を維持しながらハイライトが入るよう特別に調整した塗装を開発しました。仕様を決定するまでには、何度も試作を繰り返し、ACTIVE LINEを体現する上質な質感が表現できたと感じています。
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これまでにはない質感にこだわった新採用のサテンマットクリア

ーー RL9で採用している、ステムとバーテープをフレームと同色にするという取り組みも珍しいです。

村河:ベースのバイクを購入して、自分の好みにカスタマイズしていくというのは、スポーツバイクの楽しみの一つではありますが、ACTIVE LINEでは、購入いただいた状態でのパッケージの完成度を高めて、みなさんにお届けしたいという意図がありました。フレームを上尾の自社工場で塗装しているというメリットを生かした取り組みだと思っています。今はまだ対応できていませんが、いずれかはシンプルスタイルでも同色ステムを準備できるようになれば、とも考えています。

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ステムとハンドルバーを同色にし、ロードバイクとしてのデザイン完成度を高めた

ーー 最後に、ACTIVE LINEを発売するにあたって苦労する点などがあったら教えてください。

村河:今回のコンセプトが社内で動き出したのが2017年の秋ごろからだったので、丸二年かかりましたが、自信を持ってお届けできるものが、発表できたことを嬉しく思っています。これまでのアンカーを知っていただいている方にとっては、大きな変化だったと思うので、どのような反応があるか気になっていましたが、発表会でも説明させていただき、方向性やデザインについて理解していただけたようで良かったです。

各チューブにまたがるラインをきれいに入れる方法、新しいクリア塗装やカラーの質感などをデザイナーや工場と試作・評価しながら煮詰めていくのが大変でしたが、こだわった分、より高い質感に仕上げられたと思います。WEBサイトやカタログの写真だけでは伝えきれない部分もありますので、ぜひショップで実車を見ていただけると嬉しいです。

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