私のバイクができるまで ~パラトライアスリート 秦選手の塗装見学 ~

 1月20日(月)、忙しいトレーニング合間を縫って、パラトライアスリートであり、チームブリヂストンのアスリート・アンバサダーを務める秦 由加子選手が、ブリヂストンサイクルの上尾本社を訪問しました。今回の訪問目的は、2020年のトレーニングバイク(RS9s)の塗装工程を見学するため。塗装スタッフが工場を案内し、数あるカラーオーダーの中から選んだ「ネオンカラー」にご自身のバイクが塗られる様子を見学していただきました。


熟練の職人による手際の良い塗装

 上尾本社の工場内では、スポーツバイクの他に一般軽快車の製造や組み立ても行っており、各製造ラインを見学しながら、今回の目的地であるアンカーの塗装ルームを目指します。塗装ルームでは、アンカー塗装歴10年以上の経験を持つ山岡が秦選手をお出迎え。下塗りを終えた状態のご自身のフレームを見ていただき、さっそく塗装ブースへ。手際よくフレームにネオンイエローの塗料を吹きかけていき、5分程度で1回目の塗装が完了。
 山岡は一見簡単そうに塗装していましたが、吹きかける塗料の量やフレームとスプレーとの距離感の調整は非常に難しく、アンカーの塗装スタッフは全員長年の経験を積んでいます。ご自身のバイクが色づけられていく様子を秦選手も興味深く見守っていました。

「今回初めて工場を見学させてもらいましたが、"国産"ってこういうことなんだなと実感しました。自分が競技や練習で使わせてもらっているバイクを日本で丹精込めて手作りしてくれているというのが見れて、すごく幸せでした。山岡さんに『心を込めて塗ります』と言ってもらえたのも、嬉しかった。
 なかなか自分の使っている機材やアイテムが作られる工程を見るという機会はないので、より一層バイクに愛着が湧きましたし、作ってくれた人たちの顔を思い浮かべながらトレーニングをがんばっていきたいと思いました」

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塗りたてほやほやのフォークを手にする秦選手。このあと一度乾燥させてから、もう一度ネオンイエローの塗料を上塗りし、綺麗なフレームカラーを作り上げる

バイクに乗るのが楽しくてしょうがない

 今回は塗り上がったフレームも秦選手に見ていただこうということで、出来上がるまでの時間に、競技のこと、そして東京2020パラリンピックついてお話を聞きました。

 と、その前に今回ネオンイエローを選んだ理由については、

「普段着る服は、グレーや黒などモノトーンなものが多くて、バイクは反対にぱっと見たときに元気が出る色にしたいと思っていました。乗車中もフレームカラーは目に入るものなので、自分にスイッチを入れるというか、気持ちが高まって『よし行くぞ!』と思える色を選びました。
 最初ネオンイエローとピンク、マジョーラ アンドロメダの3色で悩んでいて、一緒に藍ちゃん(上田藍選手)もフレームカラーを選んでたんですけど、藍ちゃんはマジョーラ アンドロメダを選びそうだなと思って聞いたら、案の定『うん』って(笑)。お揃いの色もいいなと思ったのですが、せっかくだから別の色にしようと思い、提供いただいているシューズが青だったので、色のバランスも考えて、ネオンイエローに決めました」

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 さて、もともと競泳に取り組み、そこからトライアスロンに転向した秦選手。バイクパートについてはどのような印象を持っているのでしょうか。

「トライアスロンがきっかけでバイクに乗り始めたのですが、義足をつけてバイクに乗るということは色々な制限や困り事が多く悩みの種ではありました。ペダリングの感覚がないのに、自分の動きが制限されてバイクコントロールがしづらかったり、義足が固定されてしまうので、ポジションもあまり変えることができずに、痛みを感じてしまったり。
 昨年の9月から義足なしでバイクに乗るようになって、そうしたら今まで感じていた不自由さから解放されて今はすごくバイクに乗るのが楽しいです。と言いますか、悩みがなくなって楽しさしか残っていないという感じです(笑)。痛みが出ないということは、トレーニングを中断せずに続けられるということなので、自分が強くなっていくためにも必要な決断だったなと思っています。
 昨年夏にお台場で開催されたテストイベントでは、バイクパート中に義足の中に汗が溜まってしまい、3回も立ち止まって、義足を外して汗を出すという作業をしなければならなかった。本番ではそのストレスもないので、良い結果が残せるのではと感じています」

 いろいろとお話を聞いている間に、フレームの乾燥が完了。あとはロゴマークを張り付けて、クリア塗装を行って完成という段階で、秦さんにも見ていただきました。

「カタログで選んだ色味よりもずっと綺麗な発色ですね! 乗れるようになるのが待ち遠しいです!」

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テストイベントでは、暑さに苦しめられた秦選手。今年の本番ではその反省を踏まえて、レースに臨む(写真/小野口健太)

表彰台の上からありがとうを

 最後に、いよいよ開催が迫ってきた東京2020パラリンピックの抱負をお聞きしました。

「パラスポーツは一人ではできない競技だといつも思っていて、いろいろな人が、いろいろな形で関わってくださり、私は競技ができています。今まで関わってくださった人たちと一緒に、『今までやってきてよかった』と振り返れるような結果を、東京2020パラリンピックでは残したいと思います。表彰台の上からサポートしていただいたみなさんに『ありがとう』と感謝を伝えることが私の目標です。」

 これからもブリヂストンサイクルは秦選手の活動をサポート、応援していきます。

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