【全日本選手権 個人TT Men U23】--談話-- RP9は速かったのか
6月29日に行われた全日本選手権 個人TT Men U23で梅澤幹太選手が3位表彰台を獲得した。
ほぼフラットなコースで各チームがタイムトライアル専用バイクでレースを進める中、チームブリヂストンサイクリングはロードバイク RP9をTT(タイムトライアル)バイク化しての出走。そんな中で、チームは表彰台の一角を獲得と目覚ましい活躍を見せた。
もちろん目下ブレイク中の梅澤選手の実力があっての結果ではあるが、乗り手と機材が噛み合ってのスポーツである自転車競技。
バイクの性能も表彰台を獲得するに値するものであったのだろうと話がされた。
チームに携わる宮崎監督、小松メカニックにバイクのセッティングや可能性について聞いてみた。
ロードバイク RP9 のタイムトライアルバイク化へ
まず、前提としてチームブリヂストンサイクリングにはロード用タイムトライアルバイクが製品ラインナップには無い。しかし、バイクブランドを掲げて走るレーシングチームとしては自社のバイクで結果を出すことが約束されている。
今回のレースでは、一見、不利なロードバイクスペックの車体でレースを走ったように見受けられたが、一方で結果が見込めるとの期待もあって、RP9が選択された。
まずはバイクがどのように準備されたのか、特別な仕様があったのかをチームメカニック 小松さんに聞いてみた。
ーー大会までの準備について教えてください
タイムトライアルに出場できる選手が判明するまでのアナウンスがかなりギリギリだったので、急いで3人(梅澤、三浦、木綿)のバイクを組み上げました。
準備期間が短いのはどこのチームも同じだったかなと。(エントリーした選手の中から選考を通過した選手だけが出走できた)
ーー3選手、特に梅澤選手からバイクを組むにあたっての要望はありましたか
基本的に皆、使用機材は同じで、セッティングやポジションの出し方もほぼ似たような感じで組んでいます。
タイヤのチョイスや空気圧も同じでした。
梅澤選手で言えば、ポジション的にはほとんどトラックバイク(TE9)に寄せて欲しいということで、それに近い形で組みました。
その後にロードレースの全日本選手権を前に一度試してもらって、エクステンションバーを少し上向きにしたいと言われたので、要望に沿って仕上げました。
ただ、本来であれば、ベースバー(スタートやスタンディングポジションをとった際に握るバー)の位置をもう少し低くし、スペーサーを積んでエクステンションバー(エアロポジションを取った際に握るバー)の高さを整えたかったとは思います。
※ベースバーの位置を適切な位置に下げた方がより安定して出力を出しやすく、立ち上がりが良くなる
ーーロードバイクをTT化する上で、メカニックとしてこだわったこと、気をつけたことはありましたか
配線の取り回しですね。ブレーキホースが干渉しやすいので、なるべく干渉して影響が出ないように気をつけました。
それと一番はシフターですね。
シマノの電動シフターを使っていますが、今の機構だと(シンクロナイズドシフト)だと意図せずにシフティングしてしまう場合も起こり得なくは無いです。
今回のような平坦なコースならシンクロナイズドシフトを使わずフロント側のギアを固定で走らせてしまえばいいのですが、今後フロントの変則が必要なレースを走る場合も考えて、スイッチ増設に取り掛かりました。
スイッチの位置にもこだわって、ブレーキング時にスイッチを触ってしまってギアが落ちるのを避けたかったので、あまり干渉しない位置に取り付けています。
ーーその他、バイクポジションについては
フレームサイズを一つ下げています。
梅澤選手の場合だと、ロードレースでは49サイズのところを今回は44サイズにしています。
クランク長はロードと同じく170mmでサドルの高さを上げています。サドルの前後位置はトラックバイクと近い位置です。
梅澤選手参考ポジション
身長:170cm , サドル高:709mm , ベースバー地上高:820mm , パッド地上高:873mm
続いてメカニックとしての経験も持つ宮崎監督にはRP9のTTバイク化への妥当性について聞いてみた。
ーー率直にTTバイク化したRP9と一般的なTTバイクではどちらが速いのでしょう
数値的な部分で優位性を表せないとなんとも言い切れないです。風洞実験で空力を調べるなりデータが欲しいかなと。
それこそ走りに関係する様々な要素を加味して調べられるPROFORMATでデータが得られるといいですよね。
空力的にはTTバイクが優れていても重量やその他の要素を考えたらRP9が速い場合もあるかもしれないですし。
仮にRP9が空力的に劣っていたとしても重量面では優れているはずなので、レースシチュエーションによっては優位だと断定できるかもしれませんし。
重量参考
RT9:フレームセット 1,830g(Mサイズ)RP9:フレームセット 1,360g (490mm)
ーー今回はロードTTでRP9を使いましたが、仮にトライアスリートがバイクセクションで使った場合はいかがでしょう
ロードバイク(RP9)はTTバイクやトライアスロンバイクと比べるとフロントセンターが短いので、クイックな操作感が得られますよね。要はバイクコントロールがしやすいはずです。
重量的なメリットもあります。もちろんRP9だけに言えることではありませんが、TTバイクより軽量に仕上がっているので、そこまで速度域が高くないレースではメリットになるかもしれませんね。
トライアスロンに話を当てはめるなら、アイアンマンレースなら直進安定性が高いTTバイクがいいと思いますが、登坂もあって、コーナーも多数あるバイクセクションならRP9にも武があるとも思います。
具体的な検証をしていない以上、バイクの優位性を断言することはできないが、チームは万全の準備で選手たちをレースに送り出し、梅澤選手が3位表彰台を獲得した事実と、そしてその走りを支えたのがRP9だったことは間違いない。
今後のさらなる検証と実戦での活用によって、RP9の可能性はより明確になっていくだろう。
Bike | Bridgestone Cycle Anchor RP9 |
Component | Shimano Dura-Ace × Ultegra mix |
Gear | 56-44T 11-30T 12s |
Front Wheel | Shimano Dura-Ace C50 |
Rear Wheel | DT Swiss ARC 1100 Dicut |
Tire | Bridgestone Cycle R1X Extenza 700×28c Tubelessready |
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