相模原ステージで好調の山本哲央が3位【現地取材 TOJ詳報】

皆さん、こんにちは。今年も日本最大規模のステージレース・TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の季節がやって来ました。開催24回目となる今回は長野県飯田市の信州飯田ステージから富士山、相模原と西へ移動し最終東京ステージまで計4ステージを走ります。

今回はレース前日からチームに帯同し、ステージレース4日間の流れやチームカーから見るレースの様子を選手、監督のコメントを交えながら振り返ります。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingは、1日目に落車による怪我により沢田選手がリタイヤと苦戦を強いられましたが4日間を全力で走り抜きました。沢田選手の怪我は鎖骨と肋骨複数本の骨折と、軽傷ではありませんが手術も成功し無事退院し、快方に向かっていますのでご安心ください。

有観客でのレース開催であったため、沿道から沢山のファンの皆様に応援していただき、東京ステージでは選手の直筆サインのお渡しなど直接交流させていただく機会もあり、選手の日々のトレーニングへの励みとなったことと思います。皆様温かいご声援をありがとうございました!

【ツアー・オブ・ジャパン】

日時: 5月19日(木)〜5月22日(日)

出場選手: 徳田優、今村駿介、山本哲央、兒島直樹、沢田時

詳細:https://www.toj.co.jp/

前日準備

TOJはチームカーからのサポートが認められている数少ないレースのうちの一つです。前日に大会側の無線用のアンテナの取り付けなどを行います。

また、今回がデビューとなった新しいチームカーも選手のサポートのためコースを走るため、皆さまに綺麗な状態で見ていただけるよう早川メカニックが毎日洗車を行います。

レース前日のチームミーティングの様子。

TOJの目標として宮崎監督が掲げていたのは、

①チームの力を見せつけること。

他リーグ所属チームも参加するため、「やっぱりTEAM BRIDGESTONE Cyclingは強いよね」と思ってもらえるような走りをすること。圧倒的な登板のない相模原・東京ステージではステージ優勝を狙い、信州飯田・富士山ステージでも今できる最高の走りを目指します。

②選手各々が、自分達が勝つためにどう動けば良いのかを逆算して考える練習とすること。自分に与えられた仕事がチーム全体のプランのどこに紐づいているのかを組み立てながら走り、役割を全うすることでチームの強さを発揮すること、の2点。

チームミーティングでは事前に共有されているプランの最終確認や当日のスケジュール共有などが行われました。

信州飯田ステージ

■第1ステージ 信州飯田

5/19 10:00 START

場所:長野県飯田市下久堅

距離:9.5㎞ + 12.2㎞ x 9周 + 0.3㎞ = 119.6㎞

LIVE配信:https://www.youtube.com/watch?v=Lzaxh2f4uBA

レース前のチームプレゼンテーションではフォトセッションが行われました。

信州飯田ステージは登れる選手だけが残る終始きついコース。TOJ初日の信州飯田ステージで勝つと暫定の総合リーダーが取れるため、序盤から激しい展開が予想されました。

10時にレースがスタートし、パレード区間が終わると予想通りにアタック合戦が勃発します。なかなか逃げが決まらずきつい登板で集団は小さくなり50名程まで絞られます。

4周目で4名の逃げが決まり1分程のタイム差が開きますが、7周回目で吸収。レース後半の下りコーナーで沢田選手が落車による怪我のため、病院に緊急搬送され離脱してしまいます。

残り2周回の下りでチーム右京のダイボールが単独で抜け出し、最終周回へ。最終周回で同じくチーム右京のネイサン選手がそのままダイボール選手を追い抜き優勝し、チーム右京がワンツーを決めました。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingは勝負に絡むことが出来ず山本選手が17位でゴール。

徳田選手「(自分で)総合優勝をという話もあったので申し訳ない。展開はきつくなると思っていたが、想定よりもきつかった。明日はもう総合関係ないので全力で登りたいです。」

宮崎監督「ロードメインの登れるメンバーは別格だった、TOJで総合優勝するためには登れないときついということを再認識しました。明日はノープランで、自分達のペースで登ります。」

<信州飯田ステージ リザルト>

17位 山本哲央

29位 兒島直樹

40位 今村駿介

41位 徳田優

DNF 沢田時


次のステージの山場となる富士山は滞在先のホテルから綺麗に見えました。

富士山ステージ

■第2ステージ 富士山 

5/20 10:30 START

場所:小山町富士スピードウェイ西ゲート

距離:13.0㎞ x 4周 + 9.4㎞ + 17.4㎞ = 78.8㎞

LIVE配信:https://www.youtube.com/watch?v=pvdApVSMmwo

2日目はTOJのクイーンステージ・富士山。周回コースを終えた後の、富士山5合目まで登る最大勾配が22%の『ふじあざみライン』が山場のコースレイアウトです。TEAM BRIDGESTONE Cyclingは、4人が自分のペースで登り、コースをクリアすることを目的に走りました。

前半の周回コースでは7名の逃げ集団が形成され、約2分程のタイム差がつきます。周回コースでは以前徳田優選手が訪問させていただいた北郷小学校、北郷中学校の生徒さんたちも沿道で手を振って応援して下さいました。(学校訪問記事はこちら

集団は宇都宮ブリッツェンがコントロールし、富士あざみラインへ突入すると先頭集団は崩壊。チーム右京のネイサンとダイボールが2人で抜け出しそのまま後続を寄せ付けずワンツーを決めました。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingからはゴール手前で兒島選手が山本選手を刺し32位と33位でフィニッシュ。

徳田選手は46位、今村選手は48位でゴール。

<〜番外編 チームカーから見るTOJ〜>

TOJでは、機材トラブルの際はチームカーから自転車やパーツの交換などが行われます。

メカは後部座席左側に座るため、エースの今村選手の代車は一番下ろしやすい写真一番右に配置。

トラブル時に素早く対応できるように車内の準備もバッチリです。

普段のレースでは補給所から行っているボトルや捕食の補給や、飲み終わったボトルの回収も車から行います。

チームカーは、そのチームの先頭の選手について走るため、今回は山本選手に伴走する形で一緒にゴール地点まで登りました。

軽自動車でもきついであろうこの勾配を自転車で...。伴走すると上りの辛さが痛く理解できました。

この距離から選手とコミュニケーションを取ったり、彼らの走りを見ることができるのもチームカーが出走するレースならではです。


宮崎監督「今日はみんな無事にゴール出来たので良かったです。明日からは予定通りステージ優勝を目指して走ります。ステージレースですが実質1dayのような形だと思います。うちとしては逃げに必ず乗せたいので最初から前々でまとまって全開で行きます。」

徳田選手「明日の相模原ステージは総合優勝は難しいチームがステージ優勝を狙ってくると思うので、明日はきついと思います。BSのゴールスプリントを避けたいチームも多いと思うので、逃げにはみんなが必ず乗れるようにする必要があるなと思います。」

<富士山ステージ リザルト>

32位 兒島直樹

33位 山本哲央

46位 徳田優

48位 今村駿介

相模原ステージ

■第3ステージ 相模原 

5/21 8:50 START

場所:相模原市緑区西橋本

距離:11.1㎞ + 13.8㎞ x 7周 = 107.7㎞

LIVE配信:https://youtu.be/5jS4Llv1Pak

滞在先のホテル出発時までは持っていた天気もスタート地点の橋本公園付近では小雨が降り始め、レースが進むに連れて雨足が強まる中での開催となりました。

レースがスタートするとステージ優勝を目指すチームが序盤からアタック合戦を繰り広げます。

4周回目に入ると山本哲央選手を含む8人の逃げ集団が形成されます。

今回のTOJから特に調子の良い山本選手。集団とのタイム差が少しづつ広がると、メイン集団から11名の追走集団が追いかけ、逃げ集団は18名へと大きくなります。

追走集団にはBSの選手は乗ることが出来ず、山本選手は積極的に集団を牽きます。今回は普段走っているJPROツアーとは異なり無線が使えなかったため、追走にチームメイトが乗れているのかを確認できず先頭交代に参加しなくてはならなかったこともいつものレースとは異なる点でした。

雨で体が冷えるため、補給ではお湯で割ったVAAMも準備。

集団とのタイム差は2分以上に開き、ゴールスプリントに持ち込めれば勝機の高い山本選手は、余裕を持ちながら最終周回を迎え、アツい展開に。

山本選手は最終周回でマトリックスのキンテロ選手の単独抜け出しにヴィクトワール広島のカバナ選手と追いつき先頭3名。再び後方集団に吸収され、そこでも更に抜け出しの機会を狙いますがそのままゴールスプリントへ突入します。

良い位置につけますが、ゴール前ラスト500mの登りで伸びてきたEF岡選手とマトリックスキンテロ選手にあと一歩及ばず、3位。

山本選手「複雑な気持ちです。悔しいですが、割と脚はあったことは再確認できた。最近は不調気味でしたが、TOJに入ってからは調子の良さを実感できて前で勝負できたことはよかったです。ただ、やっぱり悔しいです。」

宮崎監督「勝てるチャンスはあったが仕方ない。切り替えて明日の東京ステージを頑張ります」

レース後には宮崎監督から山本哲央選手へ、

「キンテロ選手・カバナ選手の逃げに乗ったところは良かったと思うが先頭で牽いて脚を使ってしまった。(山本)哲央が自分のスプリントに自信がないのかなと思ったが、哲央なら踏めるから大丈夫」と力強い鼓舞がありました。

見ている側もドキドキさせられ、大いに盛り上がったレース展開を魅せてくれました。これから自信をつけた山本選手のゴールスプリントでの優勝も楽しみとなるレースでした。

今日も、泥で汚れた自転車は早川メカニックが綺麗に洗車し最終日に備えます。

<相模原ステージ リザルト>

3位 山本哲央

18位 今村駿介

46位 兒島直樹

62位 徳田優

東京ステージ

■第4ステージ 東京

5/22 11:00 START

場所:大井埠頭

距離:7.0㎞ x 16周 = 112.0㎞

LIVE配信:https://www.youtube.com/watch?v=inNgvcuwD6Y

最終日となった東京ステージ、曇り予報を跳ね除け晴天に。

気温が上がったため、レース前に氷を背中に入れて体を冷やします。

和やかなムードでパレードを終え、7kmを16周回る112kmのレースがスタート。

アタック合戦が繰り広げられますが、決定的な逃げはなかなか生まれません。そんな中6周回目に6人の逃げ集団が形成されます。

タイム差は1分以上に広がり、よもや逃げ切りかとヒヤヒヤしましたが、集団は冷静にタイム差を詰めていきます。

プラン上では逃げは許さない予定だったため、どうしても追いつき今村選手での集団スプリントに持ち込みたいところ。

ここで仕事を全うしてくれたのが経験豊富な徳田選手。チーム右京と連携しながら全開で先頭を牽引し続け、最終周回完璧なタイミングで逃げをキャッチ。徳田選手の力強い牽引はレースを大いに盛り上げ、活躍が光っていました。

山本選手、兒島選手はゴールスプリントでトレインを組み、エースの今村選手を発射するため後方で温存。

集団でのゴールスプリントとなります。コーナーで山本選手がオーバーランし膨らんでしまいます。今村選手は直前の落車で後輪がぶつかり位置取りが難しく、トレインが組めずに兒島選手も前に出ますがチーム右京のクレダー選手がラストで伸び優勝。今村選手が6位、兒島選手が7位となりました。

<東京ステージ リザルト>

6位 今村駿介

7位 兒島直樹

44位 山本哲央

64位 徳田優

<リザルト>

◆個人総合時間順位

17位 山本哲央

27位 兒島直樹

45位 今村駿介

51位 徳田優

宮崎監督「今回のTOJはプランがうまく噛み合わなかった形でした。今日のゴールはまさにロードレースのスプリントといった感じで、最後の位置どりや危険回避などトラック競技とは違う能力が必要でした。とはいえ各々が経験は積めましたし次にはツールド熊野、アジア選手権が控えていますので、切り替えていきます。」

相模原ステージでの山本哲央選手の3位が最高順位と、ステージ優勝は逃してしまいましたが、4人という少ない人数ながらも全力で戦ってくれました。個々の成長も感じられ、これからに繋がる走りができたと思います。

また、レース後には、サイン入りポストカードのお渡しなどファンの方々と直接交流させていただきました。

(ファンの方が沿道で掲げて下さっていたお手製の今村選手の似顔絵ボード、特徴を捉えていてとても可愛いです。)

久しぶりの有観客でのTOJということもあり、沿道での応援やレース後のお声がけが大変励みになりました。コロナの状況を見てとはなりますが、このように直接皆様と触れ合う機会も増やしていければと思います。素敵な時間をありがとうございました。

今回も沢山の応援の声をありがとうございました!間を空けず、今週末にはツールド熊野に出走します。引き続き、ご声援をよろしくお願いいたします。

Text: Lynn Watanabe Photo: Satoru Kato & Lynn Watanabe

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