【沢田時、平野星矢が参戦】Coupe du Japon富士見パノラマがもっと楽しめる!MTB小林監督インタビュー1

みなさん、こんにちは。

7月3、4日に開催されるCoupe du Japon 富士見パノラマも、いよいよもうすぐですね!

今回のブログでは、MTB(マウンテンバイク)の魅力や、最近ロードレースでも目覚ましい活躍を見せてくれている沢田時選手、オリンピックリザーブが決定している平野星矢選手について、MTBの小林輝紀監督に色々お話を伺いました。

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−−小林監督、こんにちは。ここ最近沢田選手はロードレースにも3回連続で出場し、勝負に絡む場面も多く見られますよね。さすがはシクロ王者、ロードレースでも圧倒的な強さを誇っていますが、沢田選手がここまで強さを出せる秘訣って何でしょうか?

小林監督「普段は我々MTBチームは長野県でトレーニングを積んでいます。

MTBのクロスカントリーだと、レース時間は1時間半~2時間くらいですが、ロードレースって3、4時間走りますよね。

なので、沢田がロードレース出場を決めたタイミングから、MTBではなくロードレーサーに乗って、長時間走る練習を積んでいます。

MTBの選手って、1.5-2時間のレースで自分をしっかり追い込み続けられるかどうかって練習をするんですね。シクロクロスだとレースは1時間。つまり、レース時間中はずっとアタックをかけ続けてる状態なわけですよ、その時間帯は。良くも悪くも休まないのが基本なので。

なので、沢田もロードレースでそのオフローダー的なフィジカルの強さ、アタック力を活かせたのかなと思いますね。」

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−−なるほど。MTBとロードレースの競技の特性や違いってどうなんでしょうか?

小林監督「ロードはやっぱりダイナミックなところを登ったりとか、すごく高速スピードで展開したり、ゴール前のスプリントとかって華やかだしアクションが見えますよね。でもMTBはそういうわかりやすい見せ場がある、というよりは、ひたすらアグレッシブなオフロードを走ります。

そして2つは戦い方も全く違います。

ロードは、エースを勝たせるためにチームで戦うわけですし、空気抵抗がものすごく重要な要素になりますので、集団の中で脚を休ませ、溜めながら、アタックをかけるタイミングを見計らったりする訳です。

一方、MTBにエースなどは居ないので、個人で勝ちにいきますし、空気抵抗に影響されることがあまりない。道も曲がりくねっていたり、極端に狭かったりで追い抜くことが不可能な一本道も多いです。なので、集団の中に留まるメリットがあまりないんです。

最初から最後まで、ひたすらに前を目指して走らないと、勝ちを狙いにいけないんですよ。

そうなると、必然的にインターバル※の本数も多くなりますし、MTBはこの能力がどれくらい高いのかを競う競技とも言えますね。(※インターバル:短時間で全力を出し切り、少し休んでまた全力を出す行為を繰り返すこと。)

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MTBって1.52時間のレースの中でほぼ休みってないんです。

下り坂で脚を休めれば?って思うかもしれませんが、落差が大きかったり、道が狭かったりで、体幹を崩さず整えることに集中しながら下るので、脚は止めていますけど、心拍数があまり落ちないんですね。

下る時もサドルからお尻を上げて、ペダルの上に身体を立たせるスタンディングという状態なんです。そうすると漕いではないけど、ペダルを押している状態になります。なので重力や他人の力で休めるポイントって、本当にないんですよね。」

なるほど、同じ自転車競技とはいえ、戦略や競技特性などが大きく違うことがよくわかります。ロードもMTBも、どっちも魅力に溢れていますよね!

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−−監督から見た、平野選手と沢田選手の性格やタイプの違いを教えてください!

小林監督「二人とも面白いくらいに、性格が全く違いますよ!

沢田は頭脳派です。とても頭を使うタイプですね。レースでは、ここはこうした方がいいとか、あのラインはここを取るのが一番速いとかを試走の段階で計算して、ライバルの動きとかもある程度予測しているので、それを忠実に再現しにいこうとします。トレーニングの際はタイムなども全てきっちり計測して、データをデジタル管理しているタイプです。

平野は対照的で、直感型というか、ライバルなどは関係なくて、常に自分との戦いをしているイメージですね。彼はどんな試合であろうとも、自分にとっての最高の走りは何か、というのを追求して走ってますね。

トレーニングも、一人で行うのを好みます。人にペースを合わせたり、指示されたメニューを行うよりも、自分の感覚やコンディションでトレーニング内容を決めていくんです。自然野生の感覚といいますか。」

――性格の違い、とても面白いですね!そこにも注目して、今後レース観戦を楽しみたいなと思います。ここまで性格も対照的な選手をトレーニングするのは、メニュー決めなど大変だったりしませんか?

小林監督「驚かれるかもしれませんが、僕は彼らの毎日のメニューを決めないんですよ。もちろん大まかな年間の流れとか、レース前の行動はありますし、冬は雪山でクロスカントリースキーなどで脚力や体幹トレーニングを積ませますけれど、日々の細かいトレーニングは、その時の課題や不安などを把握して、選手自身で決めてますので、それに対してアドバイスしたり、サポートをするのが基本です。

彼らは日本が誇るトップライダーですし、プロアスリートですから指示されなくても、放っておいたら自分を追い込んで強くなろうとするんです、アスリートなので。

本人たちがそうやって強くなりたいに決まっていて、血の滲むような努力を重ねてきているので、選手自身が考えた最善策を日々こなしていると僕は信じて、彼らの相談に乗り、アドバイスをして、全面的にサポートすることに徹しています。彼らが自らアイディアを出せるようにするのが私のコーチング方法です。彼らを信じて、リスペクトすることが何より大事だと思うんです。

2人がそれぞれ、本当の意味でやり尽くせるかが何より大事であって、日本一を目指す彼らのそのプロセスを、僕は全力で支えたいと思っています。」

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−−7月のCoupe du Japon 富士見パノラマ10月の全日本選手権の注目ポイントはありますか?

小林監督「沢田はロードでも調子がいいので、そこで得てきた新しい一面を富士見レースでも見せてくれると思います。

平野はオリンピックリザーブという立場でしっかりトレーニングを積んできていますし、10月の全日本選手権に向けて気合いも十分だと思います。

1人しか優勝できませんが、僕はどちらも全力でサポートしますし、彼らの軌跡を目撃することが楽しみでなりません。」

恥ずかしながら、私は自転車選手が雪山でトレーニングを積んでいるとは初耳でした!

監督曰く、MTBとクロスカントリースキーの足の使い方や体の感覚がとても近いことから、世界のトップライダーの多くは、クロスカントリースキーなどをトレーニングに取り入れているとのこと。

平野選手、沢田選手の圧倒的な強さも、このウィンタートレーニングがもたらしているんでしょうね!

もっともっと書きたいことがあるのですが、今回はこの辺りで。

みなさん、7月のCoupe du Japon 富士見パノラマをどうぞご期待ください!

また次回もお楽しみに。

text: Kumi.Fujita  photos: Hiroyuki NAKAGAWA

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