MTB選手がロードレースに出場、有利な場面とつらい場面は? 【MTB沢田に聞くロードレースの感触】

MTB選手がロードレースに出場、有利な場面とつらい場面は? 【MTB沢田に聞くロードレースの感触】


2021/5/29 TOJ Stage 2

TEAM BRIDGESTONE CyclingのMTB選手である沢田時は、5月28~30日に開催された、ロードのステージレース《ツアー・オブ・ジャパン》(TOJ)に出場しました。

沢田は、MTBとシクロクロスの両競技に出場するオフロード・バイシクルの選手です。昨年のMTB全日本選手権では3位となり、シクロクロスの2020年度全日本チャンピオンを獲得しています。


2020/11/29 シクロクロス全日本選手権

レポート


 →沢田が4年ぶり2度目のシクロクロスチャンプに【シクロクロス全日本選手権】


 →2020MTB全日本選手権 男子XCO 平野2位、沢田3位に


2020/11/8 MTB全日本選手権

オフロードを走るMTBやシクロクロスに比べてロードレースは、競技特性が大きく違います。オフロード競技は、荒れた路面の抵抗が大きく、集団での走行がほとんどないため、レース強度がとても高い傾向にあります。

参考


 →3次元にうねる土のコースで競う技術と体力:マウンテンバイクレース【レース基礎知識】
 

 →【2021年BGTチーム員紹介】沢田 時

その一方で競技時間は短く、MTBでは1時間半程度、シクロクロスでは1時間前後となり、クリテリウムほどの競技時間となります。そんな特性に体を合わせてトレーニングを重ねるMTB選手の沢田は、今年がロードレース初出場です。

MTB選手がロードレースに出場すると、どんなところに辛さを感じ、どこがアドバンテージになるのでしょう。ロードレースの出場に、まだ新鮮な感覚を持っている沢田に、そのあたりを聞いてみました。




2021/5/30 TOJ Stage 3


*ロードレースのレース特性は、MTBやシクロクロスに比べてどのように違った?

まずロードレース参戦前に一番心配していたのは競技時間の長さでした。しかし群馬のレースは3時間ちょっと、TOJも3ステージともに2時間半以内で終わるレースだったので特に問題はありませんでした。さすがに4時間を超えるようなロードレースだと厳しくなってくると思います。


2021/5/15 Jプロツアー 群馬

オフロード競技との一番の違いに感じたことはレース中に休める時間があるということです。競技中に会話ができるくらいまで心拍数が下がることはMTBやシクロクロスでは有り得ないことなので新鮮でした。

しかし決して楽というわけではなく、休んで脚を貯められるからこそ勝負所では非常に高いパワーを出さなければなりません。自分にとってはMTBとシクロクロス以上にインターバル特性の高い競技だと感じました。


2021/5/15 Jプロツアー 群馬


*ロードレースの参戦は、MTB選手には何がキツく、何が楽に感じられた?

平坦路や緩斜面でのスピードが乗った場面での踏み方は慣れていないのでキツく感じます。

登りでもオフロードに適したトルクをかけたペダリングが身に付いてしまっているので、同じ速度であっても他の選手より脚を使ってしまっている印象がありました。

逆にロード選手が苦手としている印象がある前半からのアタック合戦による激しい展開は、僕は非常に得意です。レース開始直後の登りでのアタック合戦はMTBでは当たり前の展開だからです。

ここまで2ステージで逃げに乗れたのも、アタックに対応することへの体力的な余裕があるからだと感じています。


2021/5/15 Jプロツアー 群馬


*ロードレースでは積極的なチームプレーが行われ、MTBではほとんどないが、その辺りの勘所はどうつかんだ?

これまでのMTBやシクロクロスでの海外レースでの経験が非常に役立ちました。

実力も名前も分からない選手と戦ってきた経験は豊富にあるので、そこで磨かれたライバル選手の走りを見る観察眼のようなものが非常に役立ちました。

またここまでのロードレースは少人数の参戦ということもあり、各々が何をしなければいけないかという明確な仕事を毎度ミーティングで話し合えていたことも大きいです。

自分と同年代の徳田選手、若手の山本選手、河野選手からも沢山アドバイスを貰いましたし、チーム練習のときから自分の長所と短所をはっきりとチームメイトに見せるようにして、チームの戦略の幅が広がればと思っていました。



2021/5/28 TOJ Stage 1


*TOJ参戦の中で、特に印象的だった走りのシーンは?

勝ち逃げに乗れた第2ステージ相模原のラスト2周です。

一度集団から千切れたのですが、ナショナルチャンピオンの入部正太郎選手(弱虫ペダルレーシングチーム)とローテーションを回して先頭集団に復帰できた場面です。

MTBでは他選手と協力する場面はほぼ無いので、とても新鮮でロードレースの面白さを感じました。


2021/5/29 TOJ Stage 2


*これからもロードレースへの出場は予定している?

直近では6月12日のJプロツアー・群馬CSCへ出場します。自分にとってはTEAM BRIDGESTONE Cyclingのロード8人のフルメンバーで戦う初めてのレースになるので非常に楽しみです。

その後は本業のMTBへ支障が出ないように身体と相談しながら、ロードレースに出場していけたらと考えています。また全日本ロードも日程が合えば参戦したいと考えています。


*マウンテンバイカーという視点で見る、ロードレースの楽しさとはどんなもの?

MTBはコース自体がとても激しいので、機材をレース環境に合わせてトラブルなく速く走らせる技術を含め、自分との戦いだという側面が強くあります。

ですがロードレースは完全に他者との競争です。実力はもちろんのこと、頭も使わなければ勝てない競技だと感じますし、そこにMTBとは違った魅力と楽しさを感じています。

もっと経験を積んでいつかロードレースでも勝ってみたいですし、ロードでの経験がこれからのMTBに必ず活きてくると思っています。



2021/5/29 TOJ Stage 2



今週末、6月12日(土)のロードレースは、TEAM BRIDGESTONE Cyclingからは、沢田を含む8名の選手が出場予定です。

海外トラックレースからの自主隔離期間を終え、このレースにはフルメンバーで挑みます。選手それぞれの特性を活かした、興奮するレースを作り出せることでしょう。

勝利に向かい、どんな状況でも全力で挑むチームブリヂストン選手に、皆様の熱い声援をよろしくお願いいたします。

photos: Satoru KATO / Hiroyuki NAKAGAWA / Kei TSUJI

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