チームパシュート/日本記録を3秒以上更新するも、東京2020オリンピックへの挑戦をここで終える【2020UCIトラック世界選手権】

チームパシュート/日本記録を3秒以上更新するも、東京2020オリンピックへの挑戦をここで終える【2020UCIトラック世界選手権】


レース名:2020 UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIP
種目:男子4kmチームパシュート
開催日:2020年2月26日(水)
開催地:ドイツ/ベルリン ベロドローム
TEAM BRIDGESTONE Cycling 出場選手:窪木一茂、近谷涼、今村駿介、沢田桂太郎


ドイツ・ベルリンにて2020年2月26日に開幕した、2020トラック世界選手権。初日の男子4kmチームパシュート予選に日本ナショナルチームとして出場したTEAM BRIDGESTONE Cyclingの窪木一茂、近谷涼、今村駿介、沢田桂太郎は、3分52秒956のタイムを出し、これまでの日本記録を3秒以上更新しました。
しかしこの結果は予選9位。大量のUCIポイント獲得には至らず、オリンピック出場への挑戦は、4年後のパリ2024オリンピックまで持ち越しとなりました。


4kmチームパシュートのゴール直後、ゴールタイムを見たチームスタッフは驚きました。「3分52秒台? なにか間違ってるんじゃないの?」速すぎると思ったからです。

これで、現在のTEAM BRIDGESTONE Cycling選手たちによる記録更新は3度目。その記録更新を担うのは、ブリヂストンサイクルが開発し2019年9月にデビューしたトラック中距離用新型フレームです。



*日本記録更新の履歴

3分57秒801(2018/2/17)2018 アジア選手権
 ↓ ー0秒313
3分57秒488(2019/9/16)2019 全日本選手権 *新フレーム使用開始 /現チーム員
 ↓ ー1秒201
3分56秒287(2019/12/6)2019-2020 ワールドカップ第4戦 
 ↓ ー3秒331
3分52秒956(2020/2/26)2020 世界選手権



クレイグ・グリフィン日本中距離コーチはレース後に言いました。

「昨年9月に私がコーチに就任してから、全日本選手権、アジア選手権、そしてワールドカップ連戦と重要なレースが続いたため、選手の体力を上げる時間を取れませんでした。

そこで1月には沖縄での合宿を組み、ロードトレーニングを主体にして基礎体力の向上を目指しました。その結果2月に伊豆ベロドロームで行なった合宿では、冬の冷たい空気の中でもいい予感のするタイムを出していました」(グリフィン コーチ)


昨年12月にあったトラックワールドカップ第5戦からこの世界選手権までの3ヶ月間、ブリヂストン選手たちは初めてまとまった時間を取って練習を積んできました。レース前に選手たちに話を聞くと、「自分たちは進化している」との言葉を口々に聞きました。

総距離4kmのチームパシュートはスタート、選手4名の全体のスピードを上げるため、最初に先頭で風よけとなり加速していく役目を沢田が担います。沢田が上げていった周回タイムは、事前の予定より速いものでしたが、4名全員がそのペースで走りきることを決意、そして4kmを走り切りました。


「ゴールしたらチームが騒いでいて、(3分)52秒というタイムを見て感動しました。最高に嬉しかったです。走ってる時も今までにない感覚ですごく一定して走れ、みんなも程良い緊張感で『これはタイムが出そうだな』という気になっていました。

ワールドカップでは(前)59 x(後)14Tというギアをかけていたんですが、この直前の合宿で60 x14Tに変えました。それが功を奏したのだと思います。ただ世界はもっと重いギアを踏んでいるので、そこがこれからの課題ですね。

オリンピックへの出場は難しくなってしまったけれども、次の4年後にもつなげられる、東京オリンピック後の活動に向けてのパフォーマンスを出せたと思います。これを弾みに次の4年後のパリにはチームパシュートでも出場する、というみんなの夢を叶えたいです」(窪木)



(近谷、今村、窪木、沢田)



(今村)

「(タイムを縮められた要因は?の質問に)すごく初歩的なことで、ライン取りだったり、走りを整えたということです。なおかつ1月に合宿を組んでもらって、それが持久系能力を向上させるトレーニングだったので、練習中は身を持って感じなくても、走り切った後にこれが自分のパフォーマンスにつながったんだなと感じました。

後半は、前半自分が休ませてもらった分しっかり引けたらという気持ちで走り、自分が先頭のときには普段出せないようなラップタイムで交代できたので、『タイムは出るだろうな』という感覚でゴールしました。走っている感触がとてもよかったです。結果は残念でしたが、世界との差を感じて悔しさを持って、明日からトレーニングしていければなと思っています」(今村)



(沢田)


「最初のペースを上げてしまい、速いなと思いましたがキツイ感じはなかったので、このペースで行けるなら行ってしまおうと思いました。みんなも同じ気持ちで、ここまで行ったんなら行ってしまおうと。

 レースを終わって振り返ると、1回目に先頭を引いた後、2回目の先頭を待って後ろに付いてる時に余裕が増えたかなと感じています。今までは、いっぱいいっぱいの状態から2回目を引くという状況だったんですが、今回は2回目を待つ時も余裕ある感じで進めたので、そこが大きかったのかなと思っています。

ただ2回目に引く距離を、今回の1周半ではなく2周以上にまで増やせれば、もっと貢献できるでしょうね。これからまたベース作りの期間をしっかり作っていけば、さらにペースを上げられそうです。次のパリまでは長いので、気長に考えてやっていこうと思っています」(沢田)



(近谷)


「これまで立ててきた計画がうまくハマったんだなと感じました。順序立ててやるべきことをやってきて積み重ねた結果、一気に52秒まで記録を更新できたんだと思います。

世界戦とか大きな試合になると、練習では出さないような力が出せることが多いです。今回のペースも練習でもなかなか出せないもの。ただ本番だと、会場の雰囲気や気持ちの高揚、今回は日本から来てくれた方の声援が聞こえてきたおかげで、自分が持ってる以上のものを引き出せたというのがあります。本当に。そこにも心から感謝しています。

東京2020オリンピックの出場枠は獲得できませんでしたが、今日このタイムで走ってみて、世界との差を確認でき、離されていた差が縮まってきてチームとしての可能性が見えてきました。絶対届かない所じゃないぞという。5年前は届かなかったものが、今は手が届くものになっていますからね」(近谷)



(沢田、窪木、今村、近谷)


東京2020オリンピックへの出場国枠取りに関するレースは、この世界選手権が最後となります。予選敗退となったこの結果は、チームパシュートで日本が枠を獲得できるまでに至りませんでした。オリンピック出場への挑戦は、4年後のパリ2024オリンピックまで持ち越しとなりました。

「ただ今日の結果でとても大切なのは、選手たちの力がこれまでに比べ格段に上がっているのを証明できたことです。さらなるゴールは、このチームでさらに力をつけ、4年後を目指していくことなのです」(グリフィン中距離コーチ)

なお同日に行われたチームパシュートの第一回戦では、予選で世界新記録を出したデンマークが、そのタイムをさらに塗り替える3分46秒203の世界新を記録しています。



【予選リザルト】2020/2/26 4kmチームパシュート

1 デンマーク 3分46秒579 (世界新)
  HANSEN Lasse Norman
  JOHANSEN Julius
  MADSEN Frederik Rodenberg
  PEDERSEN Rasmus

2 ニュージーランド 3分48秒742
  STEWART Campbell
  GATE Aaron
  GOUGH Regan
  KERBY Jordan

3 フランス 3分49秒558
  THOMAS Benjamin
  DENIS Thomas
  ERMENAULT Corentin
  TABELLION Valentin

9 日本 3分52秒956
  CHIKATANI Ryo 近谷涼
  IMAMURA Shunsuke 今村駿介
  KUBOKI Kazushige 窪木一茂
  SAWADA Keitaro 沢田桂太郎

最新記事

Article

前の記事へ 次の記事へ