【東京2020オリンピックへの条件】女子トラック短距離 太田の場合

東京2020オリンピックへの条件/女子トラック短距離 太田の場合

(太田)

photos: Midori SHIMIZU / Team CAMERA


トラック全日本選手権に参加し、女子スプリント、女子ケイリン共に2位だったTEAM BRIDGESTONE Cycling 太田りゆ。

「大切なのは、10月にあるアジア選手権なので、この全日本にむけて特に調整はしてこなかったです」と言います。



彼女にとってアジア選手権出場が大切なのは、スプリントとケイリン、共に五輪出場枠を決定する「オリンピック・ランキング」を上げる必要があるためです。9月20日時点でのオリンピックランキング、それぞれの競技のは下記のとおりです。

→→女子スプリントのオリンピックランキング 日本 18位


→→女子ケイリンのオリンピックランキング 日本 7位

このスプリントとケイリンの五輪出場枠の決定方法を簡単に記載します。



ケイリンとスプリント、ともに最大参加者数は30名です。そのうちの16名の枠は、女子チームスプリントに出場する8つのチーム、それぞれ2名の選手に自動的に与えられます。

このチームスプリントに出場しなかった国で、それぞれの競技でオリンピックランキング7位以内の国は1名の枠を獲得します(7名分)。さらにスプリントで枠を得た国はケイリンに、ケイリンで枠を得た国はスプリントに出場できることになります。

16(チームスプリント)
+7(スプリント・トップ7国)
+7(ケイリン・トップ7国)
 =スプリント&ケイリンともに最大30名、という形です。



(中央:太田)


そして日本は、女子チームスプリントには出場しないため、ケイリン、スプリントともにランキングトップ7に入り、枠を獲得する必要があります。

現状では、先のランキングどおり、日本はケイリンでは7位、現時点で枠を獲得できるランクです。そして現在18位のスプリントもトップ7に入れれば、スプリントとケイリン、共に日本から2名の選手が参加できます。

そして現在、日本出場枠のポイントを世界で稼いでいるメインの2人が、チームブリヂストンの太田、そして太田と同じブリヂストンの短距離トラックフレームに乗る小林優香選手(DREAM SEEKER RACING TEAM)の2人。

彼女たちが力を合わせスプリントのランクを7位にまで上げれば、2人ともが東京2020オリンピックを舞台にメダルを目指せます。



(左:太田、中央:小林選手)


さて、2019年の全日本選手権での太田は、スプリント、ケイリンともに2位という結果でした。優勝は共に小林選手でした。小林選手は、TEAM BRIDGESTONE Cycling太田と共に世界を相手に戦うナショナルチーム員であり、ともにガールズケイリン選手でもあります。

同様の環境で同じ夢を追う仲間は、太田最大のライバルです。全日本を終えた太田に、今回の走りと五輪に向けたステップについて聞きました。

レースレポート  →→9/14 スプリント / →→9/15 ケイリン  


ーー全日本を通して思うところは

結果としては2日間とも2位でしたが、今までやってきた練習だったり、変えたいと思ったことが、実行できていることを実感できた2日間でした。今やっていることが正しい方向性なんだなというのが明確に見えました。

特に、いま行っているのは、自分がどういうメンタルだったか、心境だったかというのを記録しておくこと。この記録すること自体が大切なんです。タイムの記録も取っていて、自分が順調に上がってきているのをせいかも見えてきていて、そういうのも大事かなと思っています。



ーースプリントもケイリンも、小林選手との対戦に

小林選手とは、お互い一緒にガンバらなくてはいけない立場にいます。スプリントの国別オリンピックランキングを上げて、五輪出場権をもうひと枠取るためです。

もちろん彼女には勝ちたいです。小林優香選手に勝つというのは、大きなブランドだと思います。アジアの選手がリスペクトする選手ですから。今はそういう選手を相手に恐れず、勝つんだという気持ちで戦えるようになっています。

でも去年を振り返ると正直そんなことはなく。「小林選手だから負けてもしょうがないかな」って若干思いながら、レースをしてた面もありました。なんですが今シーズン、お互いにスプリントの存在がすごく大事になってきて。負けてもしょうがないなんて言っていられない。彼女の背中を追いかけて強くならなくてはいけない。

今日はほんとに勝つ気でやったんですが、やっぱり相手が強かった。ただもう少しだなという手応えも掴んでいます。



(左:小林選手、右:太田)


ーー東京2020オリンピック出場に向け、いまの現状は

10月中旬にアジア選手権が始まります。これはオリンピックランキングのためのへのポイントを多く獲得できる自分たちにとっては大きなチャンス。

ケイリンは、日本の国ランキングも上位ですし、戦えています。出場国枠にも手が届いているので、スプリントとケイリン両種目にひと枠ずつ確保できています。これにスプリントでの出場枠を加えて、もうひと枠を手に入れるため、今シーズンはスプリントに力を入れて練習しています。

去年のワールドカップを振り返ると、自分のタイムはぎりぎりで予選(フライングスタート200mタイムトライアル)を勝ち上がれるぐらいのものでした。でも今の感じなら、中間ぐらいのタイムで勝ち上がれて、対戦につなげていけるかなってて いうタイムは出せてきています。

去年はずっと予選は11秒3台だったんですが、今年は11秒3は一切なく、11秒2台に上がってきていて、10秒台もかなり現実的に見えてきています。練習中のタイムで言えば本当に出るので。。。



私本番になると、気が大きくなって、がんばろう、がんばりたい!ってなっちゃって、結局固くなってるって言われちゃう。

『いつも通りにする』っていうのは、アスリートにとっては一番難しいことなんですね。でも、いつも通りに出来さえすれば。自分の力はそこまで伸びてきてると思うんで。

去年は、なんとか勝ち上がれる予選タイムだったので、一回戦で一番速い選手と当たって負けることがよくありました。でも今は、予選のタイムが同じぐらいの選手と1回戦を戦うようになってくると思うんです。



ーーアジア選手権まであとひと月ほど

あと1ヶ月でどれだけ上げられるか、すごく楽しみです。ギアも変えて、コース取りも安定してきている中で、ここからまだアジア選手権までの間に、伸びしろはあると思うんですよね。

2週間前に、中国でUCIレースに出たんですが、自分なりにいいレースができたんですよ。

→→【China Track International】UCIレース連戦2日間、太田は3度の表彰台に
https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/09/190830-Track-China.html

2日連続で対戦したスプリントでは、中堅の世界ランク15位ほどの香港選手に2日ともしっかり勝ったんですよね。それも自信になりましたし、これまでの『スプリントが苦手だ』という気持ちは、少しずつ薄れてきていると思います。



おととしを思い返せば、ケイリンもスプリントも全然走れなくて。『本当にオリンピックなんて私は目指せるんだろうか』と不安になったときもありました。

でもその一年間で、ケイリンではワールドカップでメダルを獲るまで行きましたし、どういうふうに自分は戦うのがいいのか、自分の長所や短所がわかった一年だったんですよね。その一年ですごく環境も変わったし、レベルも上がった。

1年目のケイリンで感じたその感覚に、今のスプリントでの感じがよく似てるんですよ。これからの一年で、ケイリンと同じように変わっていくんじゃないかと思っています。



ーーこれからの目標を具体的に

まずはアジア選手権、そしてワールドカップも全5戦全てに出場します。

これはアジア選手権だけでの目標ですが、ケイリンではメダルを取ること。スプリントでは5位以内に入ること。まずは現実的なところかなって感じです。

続くワールドカップでは、ケイリンでコンスタントに決勝に残ってメダルを獲って、ポイントをさらに獲得すること。

そしてスプリントは、オリンピックポイントの獲得をリアルに考えていくならば、本戦での一回戦の対戦を勝てれば、世界選手権には出られるんですよね。だからまずはそこ。予選をいいタイムで勝ち上がって、一回戦にしっかり勝つ。

もう本当に、出たいなら、勝て、という。もう自分次第です。オリンピックのためにどうなっていくか。全ては自分次第です。

半歩ずつですけど、階段を登っているような感じです。見てくれている方も、私がちょっとずつ強くなっているんだな、というのはわかってもらえる動きなんじゃないかな。。。多分していると思っています(笑)。

そんなふうに、見てくれている周りを楽しませつつ、私もがんばる。「あいつ大丈夫かよ?!」って言われないようになりたいなと思います。


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