【チームブリヂストンは特殊?】ロード専任の徳田に聞く、自分以外ロード専任選手のいない環境でどう変わったか


(兒島、徳田)


7月11日、福島県石川町行われた《JBCF》石川ロードレースでは、チームブリヂストンの今村駿介が、新型ロードバイク《ブリヂストンアンカー・RP9》に乗り、優勝しました。

ゴール後の今村が『チーム全員が協力してくれて、最後みんなのお膳立てで僕が先頭でゴールしただけです』と語った通り、他のチームメイトがしっかりと支え、実現できた勝利でした。

 →【今村が魅せた!新型ロードバイクRP9を連れてゴール】石川第1回JBCF石川クリテリウム&第19回JBCF石川サイクルロードレース詳報

ロードレースは、勝者のみで勝利する競技ではありません。チームメイトが犠牲となり、踏み台となって、その先にある優勝を手にできます。



(今村、徳田)

ここで、改めてチームブリヂストンの構成を振り返ります。ロードレースに出場しているのは、ロード専任選手である徳田優だけ。
それ以外の選手はトラック種目に出場、そして突如ロードレースへのデビューを果たした沢田時は、マウンテンバイク・シクロクロスのトップ選手です。

つまりチームブリヂストンのロードレース班、徳田以外はすべて『自分の勝利のために、自分が走る』自転車競技を戦う選手です。そのメンバーでチームブリヂストンは、ロードレースでの勝利を重ねています。

この環境で、ロード専任選手の徳田は、何を思っているのか。話を聞きました。


(徳田)


ーー先のロードレースでの今村選手の勝利、徳田選手からはどういう展開でした?

レースの中盤から5人の逃げができて、それを後ろのメイン集団がコントロールする形になりました。

その逃げの5人に(沢田)時さんが乗ってくれていたので、5人の逃げ切りになったら時さんが勝負できるし、その後ろの集団が早めに追いついたら僕が飛び出し、ゴールが近ければ今村(駿介)のスプリントというイメージで進めました。

結果、最終周回に入ったところで、前と50秒というタイム差だったので、それなら今村でスプリント勝負が1番なんじゃないかと判断しました。僕と(山本)哲央で集団を牽引して逃げを捕まえて、最後のスプリントのサポートを兒島(直樹)に頼み、今村に最後の勝負をしてもらいました。DNFになりましたが、河野(翔輝)も序盤のアタック合戦で逃げ、その後は僕、時さん、今村が逃げた後に、カウンターを狙われる所のケアをしっかりしてくれていて、助かりました。

チーム全員がしっかりと役割を全うできたレースだったと思います。それが勝ちに繋がったので、嬉しかったですね。選手同士でコミュニケーションをとり、状況に対して臨機応変に対応できたのが良かったんじゃないかなと思ってます。



(山本、徳田)


ーーではこれはロードレース選手としての根源的な部分への質問です。今村選手が勝利しましたが、徳田選手自身の順位は26位でした。それでもやっぱり充実感というのは、選手としてあるものですか?

もちろんあります。今村が勝って嬉しかったですし、(山本)哲央と2人で最後、ローテーションを回してタイム差を縮められたというのは、哲央を強い相方だなと思いましたし、それも頼もしく嬉しかったです。

ただ今年に入って、ロード専任である自分にロードレースでのエースを背負わせてもらえ、それに僕以外の多くがトラックメンバーで、時さんもマウンテンバイクの選手だという環境です。

今年から、トラックやMTBのような自分の順位を求めて走ることをメイン競技としているチームメイトに囲まれる環境に変わっています。

昨日の勝利はもちろんメチャクチャ嬉しかったですけど、でも、それを今、手放しで喜べるかっていうと、100%嬉しいっていう心持ちには、なんだかならなくなってしまったかな、という実感があります。

これがいいのか悪いのか、ちょっとまあ、わからないとこでもあるんですが。



ーーMTB選手である沢田選手がロードレースに出場するようになって、徳田選手だけがロード専任選手であることが、さらに大きくなってきたように感じます。これに対してはどう思います?

チームが勝てなかった時、かつ自分が狙えるコースだった時に、勝てなかったっていうときのショックが、大きくなったかなとは思います。

今年はチームメイトがみんな、ロードレースを勝っていたり、表彰台に乗っていますよね。その選手たちが勝利できなかった時に、僕がやらないといけなかったのにな、と思うことは多くなりました。

今までアシストという仕事を言い訳にしてたわけではないですし、当然誇りをもって一生懸命やってました。それがロードレースの美しさであると今も思っています。

でもやっぱりチームが勝って欲しいって期待してくれていますし、そういう役割やポジションを与えてくれています。それには絶対に応えたいとは思います。



ーー日本のロードレースチームの中では、チームブリヂストンは、特殊なんですかね?

どうなんでしょうね。でも、特殊だとは思いますね。実際いっぱい勝ってますから、特別なチームではありますね。 だから勝てるんだと思いますし、強いんだと思ってます。

去年までは、ロードチームみたいな印象が強かったので、選手それぞれの脚質に合ったコースで勝負する、みたいなところがありました。役割もきっちりとアシスト、エースと分かれていました。

もちろん今もきっちり分かれてますし、石川のレースを見ていただいても、しっかり役割分担して、基本のところでやってることは変わっていません。

でも、一緒にいる選手たちの主戦場が、自分だけで戦わなくてはいけないところなので、そういう戦いをしている選手たちが周りにいると、 やっぱり心境に変化があったなというところですね。

それは別に、今までを否定するわけでもないですし、アシストという役割のカッコ良さや美しさが霞むわけではないんですが、けれど、やっぱり自分もそうならないといけない、勝たないといけないっていうふうに思うようにはなりました。


ーーその自分の勝利に必要なものは?

フィジカル的にはやっぱりパワーとスピードです。あとは、僕以外のチームメイトみんなが持っている「自分が勝たんとあかん」っていう、そういうメンタルというか、勝負する気持ちですね。


ーー次に狙うのは先日シーズン後半に延期になった全日本選手権ですね。

そうですね。シーズンが始まる前から、今年は全日本で勝負したいっていう気持ちがあったので、そこは変わらないです。また、ツールド熊野も上りが厳しいコースがあるので、結果を出していきたいです。



photo: Kanako TAKIZAWA / Team CAMERA

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