CONCEPT

 ブリヂストンサイクルにおけるスポーツサイクル用タイヤ開発の歴史は意外に浅く2007年に始まる。世界的タイヤメーカー「ブリヂストン」の名を冠するがゆえに、ユーザーの期待はきっと高いはず。そう簡単に手を出せないというプレッシャーがあった。しかし、新たな生産設備の確保により、世界レベルの性能を実現できるメドを立てた。こうしてスポーツ車用タイヤ<エクステンザ>の開発がはじまった。以来、ブリヂストンサイクルが研究開発を進め、自動車用タイヤの開発などで多くのノウハウを持っているブリヂストン中央研究所にゴムの分析などを依頼しながら「レースで勝てるタイヤ」を追求している。

ブリヂストンサイクルが考えるレースで「勝てるタイヤ」の条件とは?

 ブリヂストンサイクルが考えるレースで勝てるタイヤの条件。その第一は「高いウエットグリップ」である。ドライコンディションの路面であれば、通常はグリップの限界を超えることがほとんど無いため、大きな問題にはならない。グリップ性能の差が顕著に表れるのはウエットコンディションの路面である。前回のRR1Xモデルでは、このウエットコンディションの路面のグリップを強化するためトレッドゴムを見直すとともに、タイヤ形状にダブルクラウンアール(図1参照)を採用することで、倒しこんだ際の接地面積を稼ぎ、グリップ力の向上を図った。そして今回のR1Xは、グリップ力はトレッドゴムを見直すことで担保しつつ、ダブルクラウンアールからシングルクラウンアール(図2参照)に変更。コーナリングで車体を倒しこんでいった時のクラウンRの変化による特有のフィーリングを改善し、さらなる進化を果たした。

そして、第二の条件は「レースを確実に走り切る耐久性」である。いくら性能が高くても、レース中にパンクしてしまっては、元も子もない。R1Xでは180g、R1Gでは185g(23Cサイズ)と軽量さを保ちながら、トレッド下にはアラミド素材のパンクプロテクターを装備し、パンクリスクに対応している。

<エクステンザ>には、タイヤパターンはない。本来、タイヤパターンは溝を彫ることで水はけを良くし、ハイドロプレーニング現象を防ぐためのもの。しかし、自動車と異なり、自転車のタイヤでは、接地面積が小さく、速度も遅いので、ハイドロプレーニングは起こらない。つまり、タイヤパターンは不要で、パターンを入れずに接地面積を増やしてグリップを得るべきである、とブリヂストンサイクルは考えている。

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クラウン形状による特性の比較図
独自のタイヤ評価方法

ブリヂストンサイクルのタイヤ評価は、試験機で計測する転がり抵抗などの実測値などのデータだけでなく、ライダーが実走インプレッションして得たフィーリング評価も同じく重視している。フィーリングテストは、体格や乗り方によって感じ方が異なるため、タイプの違う3名に依頼。評価内容は、例えば、ドライとウエットの各々のコンディションでグリップの限界値を評価するために、ライダーは全身にプロテクターをつけてタイヤが滑りだすまで倒しこんでの走行を行うなどの過酷なテストから、ドライコンディションでの通常使用のフィーリング評価まで様々。インプレッション後には、ミーティングを行い、3人の意見を細かくヒアリングして総合的な評価を得る。その際、試験機のデータが高評価であったとしても、同じくライダーインプレッションの評価が高いとは限らない。こうした測定機器の評価とともに、ライダーたちが身体で感じる様々な感覚を多角的に分析しながら、「レースに勝つためのタイヤ」を追求し続けていく。

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実走インプレッションで使われたテストタイヤの山