NEO-COT

最高の性能を持つクロモリフレーム
ネオコット誕生までの軌跡
vol.1
Photo by Kei Tsuji

最高のクロモリフレームであるネオコット。その名前は理論に由来しています。“NEO Contour Optimization Theory” 『新形状最適化理論』というもの。この理論を具現化したフレームがネオコット フレームです。

必要最小限の素材で、独特の形状となり、自転車にかかる応力を理想的に分散。その結果、発売から20年以上経っても愛され続けるクロモリフレームが生まれました。

当時の開発陣が、クロモリという素材の可能性に賭けた情熱について、ネオコットの生き字引とも言われる人物に聞きました。

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20年以上に渡り販売され、評価され続けるネオコット

自転車に高い性能を求めていくと、使われる素材は時代によって変わります。カーボン素材がその象徴、現在のレース用フレームの素材は、カーボン以外は皆無です。しかし自転車造りに長く使われてきた鉄素材であるクロモリ、この可能性にかけ、その最高の性能を引き出し、1992年に発売されたネオコットは、20年以上にもわたり販売され続け、今なお自転車愛好家から高い評価をいただいています。

ネオコットフレーム最大の特徴は、その形です。クロモリという素材の弾性、しなやかさを最大限に生かしつつ、最小限の軽さと最大限の強度を、ネオコットという理論に基づき持たせるその形。本来丸いはずのパイプ形状が無段階で滑らかに変わり、単に丸いパイプをつないだだけではない、複雑な形を作り出しています。パイプが細かく、滑らかに変形するその流れは、ネオコットフレームを手に撫でてみるとよくわかります。

ネオコットは、なぜこの形になったのでしょう。ネオコットの開発プロジェクト設立当初から、プロジェクトリーダーのような形で参画していた人物、渡部裕雄にその理由を聞きました。

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そのユニークで複雑な形状の理由

「ネオコットというのは、本来自転車というのはこうあるべきだという、それを突き詰めることから始まったわけですね。そういった理想を詰め、最も理想的な姿を作っていったところに、このネオコットの姿があるわけです。

 ここのパイプには、こういう力がかかるからこういう形をしているべきだという、部分ごとに理想の形を計算してみると、丸いパイプってのはあり得ないんです。

 それに非常にいろんな試験の結果、丸いパイプを自転車という形にすると、部分的に集中してストレスがかかるんですね。だからこそ『このパイプのここに、これだけ力がかかるのであれば、この形で、この板厚でいいのではないか』ということを、一つ一つ積み上げていったわけです。

 ですから、ネオコットには基本的にパイプの丸い部分なんてどこもないわけですよ。バックフォークにしてもどこにしても、みんな形が違うんです」

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子供車のために生まれた80年代の技術が、誕生の鍵に

ネオコットを作り上げるのは、2つの特徴的な製法です。その1つが丸いパイプを、理想的な形へと変形させる『バルジ成型』です。これはクロモリチューブの外側に鋳型を設置し、内部に超高圧のオイルを充填することで、チューブを理想の形へと変形させる仕組み。

これでチューブはラッパのような形に広がり、これがそのままパイプ同士をつなぐ接合部=ラグの代わりとなります。そのため、必要最小限の素材にて溶接でき、軽く強いフレームとなるのです。

「もともとバルジ成型は、1980年代から使われていた技術です。当初は子供車の制作コストを下げるための技術だったんですが、それを使って、ラグのないフレームを作ってしまおうというアイディアが、ネオコットを生み出す鍵になったんですね。

 それに、鉄パイプをオイルの圧で膨らませていくのは、言葉で言うのは簡単ですが、パイプが薄くもなるわけですよ。ですからいい加減にやると、いくら鉄でも破れたりするんですね。その一番いい塩梅の厚みを見つけるまでに、とても苦労しました。できあがったものを見れば、なあんだ、と簡単に思えるのかもしれませんが、その正しいやりかたを見つけるまでが大変だったんです」

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世界最高水準まで高められた、滑らかに厚みを変える技術

そしてもうひとつが『スピニングバテッド』。パイプの厚みを調整する加工技術です。これは回転させたパイプに外側からロールを押し付け、あたかも粘土を伸ばしていくかのように、パイプの厚みを無段階に変化させていきます。

一般に鉄パイプは、バテッドというパイプ内側を削る方法で段階的に薄くしますが、スピニングバテッドであれば、滑らかに厚みを変化させられ、理想的な薄さを実現することができます。しかも、このスピニングバテッドで成形されたパイプの最大肉厚は0.9mm、最薄部は0.4mm。一本のパイプで、バテッドでの肉厚差が0.5mmというのは、世界に類を見ないレベルです。

「厚い部分と薄い部分との差で、これまで限界以上のものを作れたということなんですね。ネオコットでは今までの板厚の極限以上のことが可能となった。一か所を薄くしても、その応力を受ける箇所に厚みを持たせられる。つまり、全体を通して強く軽くできたわけですね。剛性をコントロールしながらも軽くしていける、その板厚の差というのが、今も世界最高水準にある。既存のクロモリパイプではできなかったやり方ですね」

ラグの代わりにパイプを変形させる技術、パイプを薄くできる技術。これら技術はもともと、自転車作りに使われてきた技術です。それらを組み合わせて、クロモリという素材の限界に挑もうとしたところに、その独自の発想がありました。

このように、ネオコットは確かに作り上げるまでも大変でした。しかし本当に大変だったのは、その全く新しい理論と、その独自のフレーム形状を、世に理解してもらうまでだったのです。

<Vol. 02へ続く>