1817年ドイツ人によって発明された自転車。
私たちにもっともなじみ深く、身近な乗り物ですが、そこにまつわる話は以外と知られてないようです。
もっと自転車のことを知って欲しいから連載形式でさまざまな角度から、やさしくレクチャーします。

第2回
ダイエットに好都合な自転車
その1 体幹より脚を中心としたペダリング運動

「肥満とは・・・」
昔から「ダイエット」の文字のない女性週刊誌は見たことがありません。最近の男性用のフィットネス雑誌でも「効果的な減量」「引き締まった肉体」などの記事を目にします。今や男女を問わず脂肪の少ない身体を望んでいるようです。また、何も週刊誌だけでなく、学術的にも「ベルトの穴が一つ広がると寿命が10年縮まる」とも言われ、肥満は「シンドロームX」と呼ばれ、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病(成人病)の要因とされています。
ところで、肥満とは一体どのような状態なのでしょうか? 簡単に言えば「からだの中に必要以上に脂肪がたまり過ぎた状態」のことです。簡易的な体脂肪計が一般家庭に普及する前、私たちはヘルスメータに恐る恐る乗り「やせた」「太った」と喜んだり、落ち込んだりしていましたが、これは単なる体重の増減ですから、正確には「増えた」「減った」が正しい表現になります。体脂肪計が一般家庭に普及するようになった今日では体重の脂肪に占める割合、すなわち体脂肪率が肥満度の目安として定着した感があります。そこで今回から「ダイエットと自転車」の話題をお話ししましょう。
体脂肪の増減のメカニズムは非常にシンプルで、摂取したエネルギーと消費したエネルギーとの収支バランスで決まります。つまり、摂取エネルギーが消費したエネルギーを上回るとほとんどが脂肪として体内に蓄積されるのです。脂肪は日常生活の中で大切なエネルギー源ですから、この貯蔵システムはヒトを含め動物が豊かな食物に恵まれなかった時代には飢餓に対し有効に働いたことでしょう。しかし、現代は飽食の時代です。必要以上に食べた分のエネルギーは積極的に体を動かし、消費しなければ脂肪として蓄積されるのです。
そうなると、できるだけ多くのエネルギーを消費してくれる運動の方が効率的です。例をあげて説明しましょう。気になる腹部の脂肪を減らそうとして腹筋運動を試みるシーンをテレビなどで時々見かけますが、残念ながらこの運動は脂肪を燃やす運動ではなく、また消費エネルギーもわずかなものに過ぎません。なぜなら腹部の筋肉は、全筋肉の5%未満で、一般の人なら腹筋運動は1分も持続すると疲労困憊に達することがほとんどです。実は上半身の局部的な運動は脂肪を落とすことより筋力を増すことがその目的なのです。一方、お尻から下の筋肉は全筋肉の70%程度を占め、上半身の筋肉に比べて疲れにくいことから長時間の運動も楽に行え、消費エネルギーを高めるのに最適なのです。このように消費エネルギーは筋量と運動時間に比例するのです。自転車のペダリング運動はこのお尻から下の下半身を主働筋とする運動なので消費エネルギーを高める最適な運動といえます。