1817年ドイツ人によって発明された自転車。
私たちにもっともなじみ深く、身近な乗り物ですが、そこにまつわる話は以外と知られてないようです。
もっと自転車のことを知って欲しいから連載形式でさまざまな角度から、やさしくレクチャーします。

第一回
ステージレースに学ぶ自転車の良さ

定期的な運動が健康の回復・維持・増進に有効なことはよく知られています。しかし、どんな運動でもいいわけではありません。運動するときにはエネルギーが必要になりますが、このエネルギーを燃やす際に大きく分けて酸素を必要としない場合と酸素を必要とする場合の2通 りがあります。一般的に健康づくりに有効な運動は後者でこの運動を有酸素運動といいます。有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、スイミングなど、そしてサイクリングなどの自転車運動も有酸素運動の代表格です。有酸素運動は陸上競技の100m走のような爆発的なパワーは発揮できませんが、常に体内に酸素を取り入れながら小さなパワーを長時間持続させることができます。このような有酸素運動のなかでも自転車運動の優れた点をご紹介しましょう。
健康づくりのためには有酸素運動を少なくとも20分以上、できれば60分続ける必要があります。そして、週に3回以上継続して行わなければなりません。これはジョギングだから短くていいとか、スイミングだから長くなければならない、というものではなくて全ての有酸素運動に共通 の必要条件なのです。
ところで、自転車のロードレースでは「ステージレース」と呼ばれる、毎日のようにレースを行って総合時間を競う競技があります。国内では1週間程度で700km前後、あの世界最高峰の自転車ロードレース、「ツール・ド・フランス」では3週間で3000?4000kmを走り抜きます。長いときは1日200km以上、走行時間(運動時間)は4?5時間にもなります。心拍数からみた運動強度はマラソンと同等ですが、マラソンの倍以上の時間を走り続け、しかも、同じようなレースを1?3週間繰り返しています。マラソンではこのようなことはできず、実際にトップアスリートは年に1?3回のレース参加で、1レースを走ると最低3ヶ月ほど間をあけなければ次のレースに出場できないほどのダメージを受けてしまいます。 故障も自転車選手に比べると圧倒的に多いようです。同じ有酸素運動で同等の運動強度なのに、 なぜこのような差があるのでしょうか?。
答えは筋肉の収縮様式の違いです。マラソンなどの走運動では着地時に太ももの前の筋肉が伸ばされながら筋力を発揮します。この筋肉の収縮をエクセントリック・コントラクション(伸張性収縮)、逆に筋肉が縮みながら筋力を発揮する場合をコンセントリック・コントラクション(短縮性収縮)といいます。ちょうど、階段を下りるときは伸張性収縮、上るときは短縮性収縮になります。そして、以外にも辛いのは階段を下りたときの伸張性収縮で、この収縮が長く続くと筋繊維(筋肉の束)を破壊し、筋肉痛が起きます。
自転車の場合、ペダルを踏み込むときは太ももの前の筋肉が収縮して筋力を発揮する短縮性収縮が主働筋で伸張性収縮が少ないことから、長時間の運動でも筋肉のダメージが少なく、毎日のように繰り返し行うことが可能になるわけです。
運動を始めた初日は何とかこなせても、次の日が筋肉痛だと「今日は休もうかな・・・」とつい妥協しがちですが、自転車運動にはこのようなことが起こりにくい優位性があるのです。特にオーバーウエイトの方には腰、膝、足首などの関節への負担軽減だけでなく、筋肉そのものにも優しい自転車をちょっと見直してみませんか!