BRIDGESTONE ANCHOR 2024P-AN2
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09短距離種目であるケイリンのバイクに第一に求められる要素は、車輛挙動を司る剛性と接地だ。ライダーのパワーをロスなく進む力に変換する、いわゆる「推進効率最大化」のための剛性と、いかなるシチュエーションでも安心して走れるといった、操縦安定性を達成するための接地が重要なファクターとなる。これらを第一に、質量と空力のバランスをとりながらトータルなバイク開発が行われる。シミュレーションにより剛性は可視化され、フレームやパーツのどの部位にどのような負荷がかかるかが解析される。走行中のバイクの挙動も同様だ。時々刻々と変化する車輛データ(例えばフレーム挙「推進効率最大化」を達成する中で、中距離競技パシュートのバイクにおいてはより空力が占める割合が大きくなる。パーツ類まで含めた空気抵抗の最小化を達成しつつ、車輛挙動を司る剛性と接地、そして質量との最適なバランスを追求する。CFD(数値流体力学)を用いた空力解析ではスーパーコンピュータを用い、複雑な空気の流れを解析。加えてFEM(有限要素法)による構造解析では、フレームのみならず、ハンドルやホイールといったコンポーネント類も解析する。こうした解析を受けてバイクのプロトタイプが生み出されるのだが、特筆すべきはその試作が完成するまでのスピードだ。先に動・ステア挙動など)が、可視化され開発に役立てられる。特に接地に関しては、タイヤを長らく研究開発してきたブリヂストンのノウハウが生きる部分だ。タイヤメーカーならではの特殊な計測機器によって、タイヤと地面との力関係、接地圧を解析する。これらのデータをシミュレーションシステムに落とし込むことで、実際のレースコースを走る状態に限りなく近い検証モデルを確立。さらに車輛剛性/空力解析も反映させることで複合的かつ高度な車輛挙動走行シミュレーション解析が可能となり、開発精度やスピードを飛躍的に向上させたのである。見たカーボンラボのスピード感ある製造プロセスにより、最適なカーボンの仕様がスペシャリストによって解析され、フレームとパーツが即時に完成する。早いのは試作品製造だけでない。チームブリヂストンサイクリングの選手によるクイックな評価体制が確立されており、試作品へのフィードバックもスムーズだ。こうして積層や仕様を変更したプロトタイプの実走データが、風洞実験で取得される。これらのデータの解析がさらにバージョンアップしたプロトタイプの製作へとつながり、空力を重視しつつ、剛性&接地と質量とをより高いバランスで両立する一台が生み出されるのだ。車輛挙動を司る剛性と接地 ー短距離種目ケイリンのバイク空力の追求 ー中距離種目パシュートのバイク

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