LONG RIDE HACHIJOJIMA ~東京離島地熱輪行~

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遊びの日に寝坊はしない。今朝も離島だ。コテージの朝食はハワイやマイアミにいるのかっていうくらいトロピカルなアメリカン・ダイナー仕様だった。皿おおいよ。たっぷり珈琲いただいて、1日数便の国内線の到着をボケーっと眺めながらライドの準備。異様に人なれした白猫黒猫に見守られながら、即興でルート案を言い合う。本日は東側の旧火山を目指すことになった。ここは有史以来噴火の記録がないらしく、山の形も崩れて西側と随分様子が違う。また、猫も鳥も栗鼠も蛇も、明らかに注意不足というかダレていて人間のことを脅威に思っていないふしがある。ここだけじゃないとおもうけど。

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島内を一周できる都道215号線。休火山を囲む片方は陸橋とトンネルによる直登ルート。空港や街や八丈小島まで一望できるナイスビューだ。下りはオーバースピードに注意。反対側は雌雄の龍に例えられるスーパーワインディングルート。斜度はキツくないのでこちらを登りに使ったらクライマー気分が味わえるだろう。都会とは明らかに違う羊歯(しだ)や蘇鉄のジャングル感。強い日差しによる木漏れ日が強烈な白黒斑のコントラストを描き、視界の上から下まで森のディテールは失われて抽象アニメーション映画をみているようになってくる。ウエアやバイクの強烈な原色だけが異質だ。

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南側の集落には古い商店をリノベーションしたお店やコミュニティスペースもある。観光地として、新しい世代が村おこしをしているようだ。喫茶スペース(絶品のソフトクリームあります)と即席図書館と和太鼓たたき放題のお店をひやかす。また、お昼ごはんに立ち寄ったのは、昔からあるかき氷屋兼お蕎麦屋さん。大きめな窓ともえぎ色の内装で落ち着く。ここには祖父と孫娘?の奇妙な肖像画があって、メニューを持ってきてくれた相手が立派に成長した孫娘その人だった。実は北京オリンピックの頃にこの店に訪れていて、夏のうだるような暑さの中、この空間だけ風がぬけて大変快適だった記憶があった。興味ない2校が熱戦を演じる高校野球の心地よいTV音声を聞きながら手にした大ジョッキをふと見たら、黒アゲハがジョッキに止まっているという完璧な一瞬!を経験したお店。その頃から気になっていた絵。味わい深いので現地で是非お楽しみください。

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少しだけ内陸に入った中之郷地域にも、古民家をリノベーションしたカフェがある。サイクリストは男も女も大変良く食べ、よく呑んでよく喋りよく笑う。次のお店に行くためにペダルを回しているともいえる。カフェは玄関口に小さな看板があるのみで、人の家そのものだ。島内独自らしい丸石でできた壁を抜けると、全ての戸が解放された木造の古民家。モンスーン・アジアをこれでもかというくらい感じさせてくれる場所である。そしてバイクもウエアも完全に浮いている。濃い目の焙煎珈琲と蚊取り線香のアロマを堪能して、大汗かきながら近況報告やら新型パーツの話やら絶対に行くべきロコのライドコースについて語らう。陽はどんどん高くなっていき、暑さも湿気も紫外線も最高潮に近づく。何も計画しないライドはまだまだ終らない。

澤隆志
キュレーター/映像作家。2000年から2010年までイメージフォーラムでプログラム・ディレクターを務める。現在はフリーランス。ロッテルダム、ベルリン、バンクーバー、ロカルノ等の国際映画祭や、あいちトリエンナーレ2013、東京都庭園美術館など国内美術館等にプログラム提供、イベント多数。

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