トライアスリート 上田藍

ひとつのミスも許されなかったリオ五輪
vol.2
Photo by Jinya Nishiwaki

2015年後半、10月のメキシコシティでの高地合宿から調子の上がってきた上田藍選手。自分が課題としていた泳力をさらに高められたことが、昨年メキシコ・コズメルでのワールドカップ優勝へとつながり、さらには日本選手権優勝から世界大会5連続入賞という快挙に繋がっていった。
その好調さは2016年前半も続く。5月に日本で行われたITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会でも3位という好成績を獲得し、8月に控える『本番』リオ五輪でのメダル獲得へも期待がかかっていた。

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——日本選手権の優勝からも、快進撃が続きましたね。

メキシコシティでの合宿コズメルからは2016年度に向けたレースでした。スイムのタイムがレースで上がってきて、その実体験、成功体験ができていました。調子を上げて、期待されて、そして勝てた日本選手権は、リオに向けたシミュレーションでした。ベストタイムも上がっていましたし。そういった状況で臨んだ横浜トライアスロンでした。

——5月の横浜トライアスロンでは3位表彰台に。調子の良さを明らかに感じられるレース運びでした。

前年の2015年には、バイクパートで先行集団に追いつくのが後半になり、そのためにランでペースを上げきれず残念な成績に終わったというのがありました。ただ昨年10月のシカゴでのグランドファイナルでは、ランの10kmで33分51秒というベストタイムを出せましたし、その直前の五輪代表選抜レースとなった南アフリカ・ケープタウンの大会では、7位にも入りました。そして今回の3位でも、課題が修正できているのを実感しました。

今年の横浜トライアスロンでは、スイムでもペースを狙った選手と共に上がれ、そこから3周目と早いうちに集団に追いつきました。これはプラン通りでした。落ち着いて集団の良い位置に付けながら、体力を回復してランに持ち込めたというのが、うまく行きました。

今年から乗り始めたバイク、RS9も、直進性がありストレートで安心して加速できました。また全体のバランスが良くコーナーリングも安定し、そこからの加速がスムーズだったと感じます。そういった細かな点の積み重ねで、集団に追いつきやすかったバイクだと思いましたし、ランに向けて脚を残せるバイクともなっていました。

今回は、先頭集団に一気に追いつけたという意味ではバイクの走力はアップしているのですが、ラスト1kmからのスプリントで攻め負けて3位になってしまったこと、そして優勝した選手からスイムで1分以上離れていたことといったように、課題は良かったレースの中にも見つかります。そこを仕上げれば、次のレースではさらに上を狙えると思っていました。

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——そして8月、リオ五輪。結果39位と失意のレースとなってしまいました。

リオ五輪まで、順調に結果でも実証できた良いコンディション。準備という意味では、これまでに出場した北京、ロンドン出場時にはなかった、メダル獲得に近い状況ではありました。

ただ、私は水泳の集団位置のいいところで上がる予定が、単独でのスイムになってしまって。その時のレースの状況が大きいんですが、要因となったのは、ビーチスタートだったことです。ビーチスタートはランニングしてから飛び込む、というものなんですが、飛び込むまでに走れる距離が変わるのがポイントだと思っていたんですね。その飛び込んだポイントから集団に入っていくときに、流れのない方向に泳いでしまいました。波のうねりが激しいコンディションだったので、集団の中にいた方が有利でした。結局、自分の泳力を発揮できなくなり、それで単独泳になってしまって。

自分のなかでレベルアップしてきた泳力を、リオでチャレンジしたいという気持ちがあったんですが、今回はウェットスーツを着ていませんでした。水温が20度以下にならないとウェットスーツを着られないんです。これまでいいと思っていたところは、ウェットスーツを着ていたことが多かったので、あるいは、これが私の現在の水泳の実力だったのかもしれません。そしてバイクに入った時点で、トップ集団から大きく引き離されることになってしまい、自分としての、メダルへの挑戦は、そこで終わってしまいました。39位という結果に、ひとつのミスも許されなかったんだというのを感じました。

レースを終えた直後は本当に悔しくて、ひと目も構わず涙を流しました。その後もふとした瞬間に、悔しさがこみ上げてきて、それしか浮かばなかったんです。ただ帰ってきてから多くのデータを分析して、今回はビーチスタートから心拍が上がったところでの、そこから力あるスイムに向けての自分の中の耐乳酸性の強化というテーマが見えました。疲労への耐性を鍛えて高めていければ、流れを失っても取り戻せる力強さを身につけられます。オリンピックの借りはオリンピックでしか返せないと思っているので、東京での金を目指して、さらに成長していきたく思っています。

——五輪の終わった今、次なる展望を教えてください。

今年の10月には、日本選手権があります。昨年優勝できた、ITU世界トライアスロンシリーズの最終戦、メキシコ・コズメルでのワールドカップと日本選手権を獲って、シーズンを終えたいと思っています。去年も、このメキシコシティでの高地トレーニングを行うことから、入賞が続きましたからね。

リオ五輪は残念でしたが、ここでメダルを獲得した選手は、世界トライアスロンシリーズの常連たちばかりでした。今の私も世界ランキングの一桁に入れる選手になったので(コズメル大会直前で世界ランキング6位)、その領域に少し慣れてきたかなとも思っています。このランキングを維持しながら、強さの厚みを増やしていければ、東京でのメダル獲得も近くなると思います! これからも、応援よろしくお願いいたします!

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上田 藍
所属:ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター。北京、ロンドン、そして2016年のリオと3連続五輪出場となった、世界レベルの女性トライアスリート。2015年は全日本選手権、ITU世界トライアスロンシリーズ・メキシコ大会、アジア選手権に優勝。2016年はリオ五輪代表選考大会でもあった4月26日のWTS南アフリカ/ケープタウン大会にて日本人最上位の7位を獲得、横浜トライアスロンでは3位獲得。2016年リオ五輪では無念の39位。