トライアスリート 上田藍

無念の『39 位』から見えた新たな課題
vol.1
Photo by © ITU International Triathlon Union
http://www.triathlon.org/

リオ五輪開催の1年ほど前から、トライアスリート上田藍の調子は好調でした。2015年10月に、ワールドカップ・メキシコ/コズメル大会での優勝を皮切りに、世界トライアスロンシリーズの大会で5大会連続入賞、直前に日本で行われた横浜トライアスロンでも3位を獲得します。リオ五輪でもメダルか、という期待のなか、リオ五輪には39位という、残念な結果となりました。

「これまでにないほど悔しかったです。私はあまり人前に悔しさを出すことがないタイプなんですが、今回は、悔し涙が流れ続けました」

自分の弱点と向き合い、克服するという着実なステップを踏み、その実証とともにメダルへと挑んだ上田選手でしたが、リオではその夢は叶えられませんでした。2016年9月上旬、上田選手は、2232mの標高があるメキシコシティで高地トレーニングを行っています。

ueda1_02

——2015年後半から、好調な成績が続いていました。

去年の9月後半に、2232mの標高があるメキシコシティで、高地トレーニングを10日間かけて行いました。私のスタイルは追い上げ型なので、バイクで攻めて走った後でも、武器としてのランニングに、磨きをかけないと考えたからです。私は小柄な体を大きく使う走りをイメージしています。大柄な選手と戦うには、足幅を広げて、ピッチを上げて、ストライドをキープした中で回転をあげるというのが大切なんです。

この高地トレーニングは、その年の10月の日本選手権に向けてスケジュールを逆算して行ったものでもあったんですが、その最後の仕上げとしての、コズメルのワールドカップ出場でした。これを締めにして、練習の成果を見たいという意味合いもありました。

——そのコズメルでのワールドカップでは、優勝。練習も予想通りに進んだということですね。

ええ。スイム、バイクで縮まらなかった25秒の差を、ランで一気に挽回して優勝出来ました。高地トレーニングの疲労を感じながらも、ランで追い上げて優勝できたのは、疲労を抜けば優勝できるという、イメージ通りに事が運んで行きました。私の中では、順調といったところでした。

強豪選手も出場する中、表彰台に登れればいいなという気持ちでの出場でもあったので、そこで勝てたのは、リラックスした中でもパフォーマンスを出せば通用する、という嬉しい経験になりました。

このコズメルでも、その前のシカゴでの大会でも、第二集団からランで追い上げての結果でした。レースの後にも周りの選手から、ランが良かったという声をかけてもらいました。世界との交流じゃないですけれども。そういった意味合いでも、私の走りを発信できたのかなと思いました。

——では、このコズメル・ワールドカップに照準を絞っていたというわけではなかった?

はい。昨シーズン最も狙っていた大会は、その高地合宿の直前、9月18日にあった、アメリカ/シカゴでの世界トライアスロンシリーズグランドファイナルでした。五輪代表の選考レースでもあったので、絶対に結果を残すんだと思っていました。そして8位入賞。

2015年8月にリオで開催された、オリンピックのプレイベントでは、ランにキレがなく残念な結果でした。その状況からランが復活して、その上での8位だったので、やってきたことがつながったと思いました。狙ったレースで結果を残す、その力を発揮できると。私はこれを『本番力』と呼んでいます。前のロンドン五輪でも、いち早く代表の座を決めてきたので、その本番力は誰よりもあると、自分を鼓舞するモチベーションにしています。

ueda1_03

——昨今トライアスロンでは、バイクでの戦略が鍵になる?

トライアスロンでのバイクパートはドラフティングが認められているので、後ろで休んでいれば脚が残せるという考えもありますが、武器としているランが発揮できるように、バイクで積極的に攻めていかないと成績にはつながらないですね。

私の場合、まずスイムを終えた段階で、トップとの泳力にまだ力差があるので、第二集団から追うことが多いんです。バイクでは追う事と追われる事、そこが協力し合える唯一のポイントです。そこを他力本願にしてしまっては、自分で展開を引き寄せていく力が弱いと思っています。独走力を強化することでまず自分が動いて、アイコンタクトで協力し合いながら、相手も動かしていく。濃厚な関係性を築けるようにもなりました。

そういったなかで生まれたコズメルでの優勝を含め、レースを重ねる中でも着実に仕上げられたというのが、実感として感じられ、そして結果に、さらには自信になりました。だからこそ、私でモヤモヤしていたもの、いろんなことが吹っ切れて、そこからは流れのなかで結果を出していけるようになったんだと思います。

——そして、その流れの中にあったのが、全日本選手権での勝利ですね。

日本選手権は、ある意味リオ五輪に向けたシュミレーションでもありました。調子よく、期待されて勝つという最高の勝ち方をしたいと思い、それを実現しました。吹っ切れたからこその勝ち方ができたんです。

——全日本選手権では、得意のランが輝いた?

スイムですね。スイムを4番手で上がれがのはいいことでした。スイムの強化が進んでいったなかで、全日本選手権という狙った舞台で、スイムを4番手で上がれたのは、周りの選手にもプレッシャーになったのではと思います。

雨が降っているリスキーなコースコンディションでしたが、6人という適度な集団をつくり、声をかけあいなから、冷静にレースを展開できました。この6人でトップ争いができるよう。ランでは絶対的な自信があったので。

そういった意味で、今シーズンの自分が表現してきたことを、日本での優勝につなげていけたんだと思います。

<Vol. 02へ続く>

上田 藍
所属:ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター。北京、ロンドン、そして2016年のリオと3連続五輪出場となった、世界レベルの女性トライアスリート。2015年は全日本選手権、ITU世界トライアスロンシリーズ・メキシコ大会、アジア選手権に優勝。2016年はリオ五輪代表選考大会でもあった4月26日のWTS南アフリカ/ケープタウン大会にて日本人最上位の7位を獲得、横浜トライアスロンでは3位獲得。2016年リオ五輪では無念の39位。